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2025-09-15 13:41

敵を結束させるトランプの愚、インドすら敵陣に追い込む愚、したたかなインドに注目

舛添 要一 国際政治学者
 9月3日、「抗日戦争勝利80年」を記念して、中国は大規模な軍事パレードを敢行した。習近平主席は、プーチン大統領、金正恩総書記ら、20ヵ国以上の首脳を招待した。しかし、西側主要国の首脳は参加しなかった。また、8月31日から2日間、天津で上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれた。中国は、新しい国際秩序の形成に意欲的である。アメリカの覇権に対して、ロシアも中国も、それに対抗する組織作りを行っている。
 
 ロシアは、2015年1月1日に、ユーラシア経済連合(EEU、EAEU)という地域経済協同体を発足させた。ベラルーシ、カザフスタン、ロシア、アルメニア、キルギスが加盟国である。EUに対抗する経済協力体樹立を狙ったプーチンの構想だが、ウクライナはEAEUにはそっぽを向き、EUに接近した。ウクライナを何としてもEAEUに加盟させたかったプーチンを裏切ったことが、ロシアのウクライナ侵攻の背景の1つである。そして、注目に値するのが、先日、中国で首脳会議が開かれた上海協力機構(SCO)である。これは、中国、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イランの10カ国で構成される安全保障、経済、文化の協力システムである。

 天津での首脳会議で、習近平は、「平等で秩序ある世界の多極化」を提唱した。アメリカ第一主義を掲げ、内向きになっているトランプ政権とは対極的に、グローバルサウスを重視する姿勢を示した。そして、トランプ政権の関税攻勢に対抗して、自由貿易体制の維持をうたった。さらに、インドのモディ首相と首脳会談を行い、関係改善を印象づけた。ロシア産石油を購入しているとして、トランプはインドに50%の関税を課しており、皮肉なことに、それが両国を結びつけた。インドは、日米豪と 「日米豪印戦略対話、Quad(クアッド)」を結んでいる。習近平としては、これに楔を打ちたいところである。しかし、モディは、抗日戦争勝利80年の軍事パレード式典には参加しなかった。日本を敵にする会合には出ないという考えからである。インドの外交もまたしたたかである。その中国の野望を打ち砕くために、アメリカをはじめ西側諸国が注目しているのがインドである。国際政治の中で政治的にもインドの重みは増している。
 
 20カ国から成るG20は1999年に始まったが、G7にロシア、そして当時新興国と呼ばれたアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、トルコを加えた集団である。C20の中で、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国を、国の頭文字をとってBRICSと呼ぶが、これらの国々は、2000年以降に大きな経済発展を遂げている。この両者の間で曖昧な態度を取っている発展途上国や新興国をグローバルサウスと呼ぶようになった。それは、ロシアのウクライナ侵略は批判しても、ロシアに厳しい制裁を科したりすることに反対する国々であり、その典型的な国がインドである。インドは、国益にかなえば、どの国とも協力する。ロシアであれ、アメリカであれ、利用できる国はどこでも利用するプラグマティストである。したたかな外交を繰り広げるインドは、今後、ますます国政政治の中で重要な役割を果たしていく。そのインドとの良好な関係の維持は、日本の国益に繋がる。
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