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2025-12-01 05:28

国際通貨基金IMFの示す世界経済成長見通しについて

真田 幸光 大学教員
 国際機関である国際通貨基金(IMF)は来年度、再来年の経済成長について以下のような予測を示しています。IMFのコメントに私の見方も加えて、以下に総括してみたいと思います。参考になれば幸いです。
 
 世界経済は、トランプ関税などを軸とした新しい政策措置によって再形成された環境に適応しているとIMFはコメントしています。米国が示している極端な高関税の一部は、その後の協定と修正によって緩和されているとの見方の下、こうした総括になっているようです。しかし、全体的な情勢は依然として不安定であるとの見方もIMFはしており、私もまったく同様の見方をしています。また、貿易の面では、前倒し輸出など、2025年上半期に経済活動を支えた一時的な要因が、薄れてきていることも間違いありません。その結果、最新の「世界経済見通し」の世界経済成長率予測は、2025年4月の経済見通しからは上方修正されたものの、上述した政策転換前の予測を依然として下回る結果となりました。世界経済成長率は、2024年の3.3%から2025年は3.2%、2026年は3.1%に鈍化する見通しとしており、先進国の経済成長率は約1.5%、新興市場国と発展途上国の経済成長率は4%をやや上回ると予測しています。一方、世界のインフレ率は減速し続ける見込みとIMFは予測していますが、為替レートによる輸入インフレの違いなどを背景にして、国によるばらつきがあるともしています。米国では、インフレ目標を上回り、リスクも上振れしている一方で、残りの地域ではインフレが抑制されるとしています。また、日本は円安による輸入インフレリスクの継続も警戒しなくてはならないかもしれません。

 また、一方ここに、更に、「中国本土のデフレの輸出」が加わると世界のインフレ率の更なる変動要因にもなるとも私は考えています。そして、IMFは、「不確実性の長期化や、保護主義の拡大、労働供給のショックは成長を阻害しかねない。財政の脆弱性、金融市場の調整が起こる可能性、そして制度の弱体化は安定性を脅かす恐れがある。」とコメントしています。政策当事者に対しては、IMFは、「信用出来る透明で持続可能な政策を通じて、信頼を回復することが求められている。」とも提言しています。更に、貿易外交をマクロ経済的調整と組み合わせるべきであるともコメントしています。財政バッファーを再構築する必要もあるとしつつ、中央銀行の独立性は守らなければならないとも指摘、トランプ大統領などが示している中央銀行に対する様々な圧力についての懸念も示しています。

 構造改革の取り組みを強化すべきであるといった指摘もしています。政策枠組みを改善する過去の取り組みは各国にとって有益であり、産業政策にも果たせる役割があるかもしれないが、実施するにあたり機会費用とトレードオフを十分に検討すべきであると指摘しています。こうしたコメントを日本に当てはめてみると、旧安倍派の流れを汲む高市政権となった今、「アベノミクス」で示された、「三本の矢」であるところの、「金融政策」と、「財政政策」に続いて、今度こそ、明確なる、「成長戦略」を示し、日本を本格的な成長軌道に乗せていくことが重要になると思います。
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