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2008-02-26 08:58

石原大失政を泥沼化させるな

杉浦正章  政治評論家
 長期にトップの座に座りすぎで、目が見えなくなっているのだろうか。都知事石原慎太郎が世論のこぞって反対する新銀行東京に対し400億円を追加出資する議案を都議会に提案した。審議に入る都議会がよもや承認するとは思えないが、同銀行の再生は「いくら注ぎ込んでも無理」という見方が圧倒的だ。このままなら都民は血税を底知れぬ泥沼につぎ込まなければならなくなる。政治家としての誤判断の連続、石原都政はもう命脈尽きたのではないか。

 血判状で結成した自民党青嵐会のころから石原を観察しているが、はったりの強い、危険な側面のある政治家だと思っていた。しかし、都知事になってディーゼルガス規制、東京オリンピック招致、東京マラソンなど数々のよい行政をこなしているという印象だった。しかし中小企業の票を狙ったか、新銀行東京の設立はどうみても「武士の商法」ならぬ「文士の商法」で危ないという感じだった。案の定、生き馬の目を抜く厳しい金融の世界で、お役所仕事の新銀行はもみくちゃにされ、食いつぶされた。1000億円も出資して開業した銀行がである。素人商法が続けばかえって傷口を広げるに違いない。

 新銀行東京をめぐって、石原都政には3つの大罪がある。一つは、貸し渋りが金余りに移行する時期に、中小企業向け融資を売り物にした新銀行を反対を押し切って設立したという誤判断。次に、新銀行が行き詰まると、やはり反対の声を無視してさらに400億円を追加出資する議案を都議会に提出したこと。最後に、これが一番悪いが、自分の肝いりで作った銀行の経営陣を「リスク認識の甘い旧経営陣の事業運営」が原因と批判して、責任転嫁したことだ。これは政治家として一番やってはいけないことだ。

 一連の誤判断は、もし石原が首相など国政の要職についていたらどうなっていたであろうかと思うと、ぞっとする。政治家としての基礎が成り立っていない判断であるからだ。400億円の追加出資も事実上の独断でしかあり得ない。都官僚の出来る判断ではあり得ないからだ。石原が「これ以上の負担とリスクを抱え込むことに、多くの都民の理解は得られまい」という判断が出来なくなっているとすれば、由々しき事態である。

 石原は「引くも地獄、進むも地獄」と形容しているが、そこに血税を預かる都政の責任者としての意識はない。自分にとっての「地獄」しか考えられなくなっているのである。進めば都民が陥るのが地獄なのだ。この大失政がどう決着を見るか、今後の都議会からは目が離せないが、責任の取り方によっては住民訴訟や都知事リコールの動きに火がつくかもしれない。
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