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2008-04-15 08:37
高齢者医療制度と厚労省官僚の掌で踊る福田首相
杉浦正章
政治評論家
首相の目は国民の目線か官僚の目線か、で興味があったが、例によって官僚擁護の目線であった。首相・福田康夫の後期高齢者(長寿)医療制度の発言だ。14日、「説明不足、十分説明しなければいけない」「反省している」と述べた。これは新制度維持の姿勢を婉曲に表明したにすぎない。この場合、首相の反省など何の役にも立たない。少なくとも制度改善の余地はあるのに、なぜ「改善」を口にしない。それが「政治力」というものだ。野党と民放ニュース番組にとって、これほどの“好材料”はない。間違いなく政府・与党は、年金問題に勝るとも劣らず窮地に追い込まれるだろう。
これほどの大問題は、まず年金問題批判の構図がなければ、看過されていたかもしれない。その証拠には、マスコミも、野党も、2年前の6月に与党による医療制度改革関連法の強行採決が行われたときも、問題意識を持った反応をしていない。民主党ネクスト厚生労働担当大臣・仙谷由人の談話も「この新たな高齢者医療制度は、その設計自体が曖昧かつ持続可能性が疑わしく・・・」程度で真っ向から反対していない。新聞・テレビも同様の対応だ。マスコミも野党も制度への理解がなく怠慢であった。
このためか、中央各紙の論調にも躊躇が見られる。2年前にいったん制度を強く批判しなかった以上、本来なら「撤回」と叫ぶべき問題も、なぜ2年前から問題にしなかったと言われれば、論理上の欠陥が生ずるからだ。朝日新聞も、社説は1回書いたが、本質を突いていない。今朝あたりの紙面構成を見ると、制度撤回よりも、制度改善重視のようである。こうした間隙を縫って、厚労省は「周知なきままの中央突破」作戦を内々打ち立てたに違いない。“周知イコール年金と同じ非難”が巻き起こると察してのことだろう。与党の“強行突破→法案成立”という錦の御旗は、あえて掲げずにである。それでも参院選の与党惨敗で、次は高齢者医療に矛先が向くと察したか、年末になってこそこそと保険料の軽減を図っている。
そして結果的には、厚労省官僚の“作戦”が図に当たったことになる。高齢者はろくろく知らされぬまま、今日年金から天引きである。この国民“だまし討ち”ともいえる政府・与党の仕打ちに、首相が「反省している」で済むと思ったら、大間違いだ。恐らく自民党支持層は高齢者に限らず、根こそぎ離れるであろう。高齢者が扶養家族になっている場合も徴収されるのだから、息子に負担がゆくのは目に見えている。息子も自民党離れだ。参院選挙前と酷似している。保険料の差別徴収は近代日本の政治にまれにみる失政であろう。間違いを改めるのは早いほうがよい。今後政府・与党が採るべき対応は、2段階が考えられる。まず混乱を避けるために、とりあえず制度を改善する。負担できぬ高齢者への公的支援、年金額の引き上げなどで対応するのである。次に高齢者負担分となる1割を国家財政でまかなう。これには福祉目的消費税を充てる。事実上の制度撤回につなげるわけだ。この方針を衆院選挙前に打ち出すしかない。同選挙に与党が敗れれば、民主党政権は当然制度撤回に踏み切る。しょせんは大局が見えない厚労省官僚の掌で踊った罰だ。
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