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2008-06-03 22:51
宇宙の防衛目的への利用について
木下博生
全国中小企業情報促進センター参与
国会は、5月末に宇宙基本法を成立させた。マスコミは、この法律により宇宙の防衛利用を解禁するとともに、宇宙開発を国家戦略に格上げして、政治主導の体制を整えたとし、日本の宇宙政策が大転換したと報道している(たとえば、2008年5月10日朝日新聞社説)。確かに、法律を作って宇宙政策を変更したのは間違いないが、「大転換」と言うほどのことであろうか。私に言わせれば、「ようやくここまで来たか。随分、時間がかかったものだなあ」というのが正直な感想である。
1984年、中曽根内閣の時代、当時の民社党の塚本三郎議員が衆議院予算委員会で、「自衛隊は、なぜ通信衛星を利用できないのか」という質問をした。「宇宙開発は平和目的に限る」との1969年の国会決議があったため、政府部内では、「平和」は「非軍事」を意味すると解釈し、「自衛隊は衛星を利用できない」とする意見が大勢であった。当時、防衛庁で勤務していた私は、通信衛星を国民一般が電話で自由に利用している時代に、自衛隊が使えないのはおかしいと考え、関係省庁に働きかけてNTTの「さくら衛星」の地上局を、硫黄島の自衛隊基地内に設置して貰うことにした。
これが自衛隊による宇宙利用の始まりである。その後、資源探査衛星で得た情報を防衛庁が利用することができるようになるなど、徐々にではあるが、自衛隊による衛星の利用の窓は広がってきている。しかし、通信、情報、GPSなど、世の中一般の宇宙、衛星の利用は、それを遥かに上回るスピードで進んでいる。また防衛分野でも、日本を攻撃する弾道ミサイルから国土を守るためには、衛星により常に情報を収集することが不可欠である。
本来ならば、1980年代中ごろの時点で、偵察衛星を含む自衛隊による宇宙の利用を解禁すべきであった。それが20年も遅れたのは、宇宙技術の発展の方向がよく分らなかった1960年代に作られた国会決議を恐れて、それに手を触れたがらなかった政治家の人達の臆病さに原因があると考えられる。このようなことは、他の分野でも見られる。政治家や行政に携わる人達は、常に先を見て行動して欲しいものである。
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