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2008-09-26 01:20

「現実と仮想のギャップ」に振り回される現代人

古屋力  会社員
 よく出張でロンドンの地下鉄に乗る時に目にする言葉が「mind the GAP」である。要は「隙間に気をつけろ」という警鐘であるが、いま世界にとって最も必要な警鐘はこの「mind the GAP」ではないかと思う。では「何のGAPか?」と言えば、それは「リアル(現実)とヴァーチュアル(仮想)のギャップ」である。現代の世界が抱えている最も深刻な問題は、実は「リアル(現実)とヴァーチュアル(仮想)のギャップ」の問題ではないかと思う。サブプライム問題も、行過ぎた投機も、永田町の政治も、中国の毒入り餃子事件も、毒入りミルク問題も、汚染米騒動も、民主主義も、はたまたゲームや携帯依存症も、大統領選も、実は根っこで繋がっていて、その本質は「リアル(現実)とヴァーチュアル(仮想)のギャップ」の問題を抱えているということではないか。

 極論すると、最近の現代人の精神が病んできている元凶の根本には、この手のつけられない膨らみすぎてしまった「リアル(現実)とヴァーチュアル(仮想)のギャップ」があるのではないか。ギャップが全然ないのも、また夢がなくってつまらないとか、不都合だという意見もあり、かと言って、際限なく青天井に「ヴァーチュアル(仮想)」が膨らんでいっても、これは「危険」極まりない。今回のサブプライム問題は、まさに無政府状態で節操なく膨らみすぎた風船が、限界点に達して縮小(shrink)した現象だとも言えよう。1997年のアジア通貨危機もその本質は同じで、世界を席捲した過剰流動性という一種の幻想、仮想が災いしていたわけで、それ自体が資本主義の本質でもあろう。

 ではそのギャップの「最適幅」はどの程度であろうか。たまたま今日もユーロマネーのコングレスに参加して、中の1人が「感覚的な表現ではあるが」と前置きして、「リアル(現実)とヴァーチュアル(仮想)のギャップの最適値はちょうどリアルの2倍ではないか」と言っていたのが印象的であった。「目の届く範囲」といったところか。昨今のITテクノロジーの目覚しい進化は、確かに良しにつけ悪しきにつけ、世界を変えた。そして便利になった反面、カタストロフな状態に世界中が瞬時に巻き込まれる局面も多発するようになった。はてさて、これからどのようにこの「mind the GAP」をしてゆこうか。「過ぎたるは、及ばざるがごとし」とは、昔の人はうまいことを言ったものである。
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