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2008-10-11 09:58
(連載)世界金融危機という「顔ナシ」の化け物(1)
古屋 力
会社員
宮崎駿の映画『千と千尋の神隠し』に「顔ナシ」という化け物が出てくる。これは人間の果てしない欲望を象徴している。そしてあらゆるものを食べ、みるみる内に膨張する。そして自分で自分を制御できなくなる。現下の国際金融情勢は、まさにこの「顔ナシ」の化け物が世界を跋扈している状況に酷似している。いまや、人間の許容範囲を超えて「仮想」が膨張し、その影響が世界に伝播するスピードがほぼ「瞬時」となり、その「同時性」が手のつけられない勢いで加速している。本来人類を幸せにするための「工夫」のはずであったデリバティブズが、操作不可能になった原子炉のごとく、溶解して、世界中に放射能を撒き散らし、「金融のチェルノブイリ現象」という悲劇を現実化してしまっている。
そのグローバリズムと呼ばれる不可逆的な世界現象は、もはや一種の亡霊のように世界を徘徊し、不幸を撒き散らしている。元来知性があったはずの人類にかような愚行が露呈している様は、有史来先哲が喝破してきた「人間の愚かさ」を証明するエビデンスとあいなっている。自分で開発したフランケンシュタインに結局殺されてしまう科学者のように、人類は自分で生み出した化けものにいま襲われている。昔の人は「風が吹けば桶屋(おけや)が儲かる」とうまいことを言ったが、いまや世界の片隅で起きたことは、良いことも悪いことも、瞬時に自らの幸不幸、損得に直結してくる。
この連鎖の妙は、ケインズ経済学で「乗数効果」として議論され、また「バタフライ効果」等の仮説もこの延長にある。昔はこの「風が吹く」時点から「桶やが儲かる」時点までの時間スパンが相当長かったのであるが、いまやその伝播速度は瞬時となり、まさにブラジルの山奥の蝶が羽を動かした事実が、瞬時に影響を伝播して、地球の裏側で大嵐になるのである。しかも、始末に終えないのは、毒入り餃子も、サブプライムも、加害者が気がつかない地球の裏側で、その思惑以上の甚大なる被害と不幸を広範囲の人々に与えることである。そしていつも世界の貧しい人々、弱者がババをつかまされる。これは、やはりおかしい。どこかが間違っている。(つづく)
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(連載)世界金融危機という「顔ナシ」の化け物(1)
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古屋 力 2008-10-12 10:46
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