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2008-10-14 11:03

大恐慌を再現させないために

木下 博生  全国中小企業情報促進センター参与
 世界の株式市場は、相変わらず下がり続けている。1929年10月に始まった米国株式市場の暴落と重ね合わせて、大恐慌の再来をおそれる声も強い。マスコミがややオーバーに報道しているため、かえって人々の不安心理を増幅している面も否定できない。

 1929年のウォール・ストリートの株価暴落は、3年弱後にピークから89%下落したところで底を打ったが、相場が元の水準に戻ったのは、なんと1954年であった。ルーズベルト大統領のニューディール政策が回復のきっかけになったと言われているが、この恐慌が、各国間の貿易摩擦を深刻化させたし、さらに第2次世界大戦の遠因になったとも言われている。したがって、今回の世界的な株価の暴落が1929年恐慌の再現にならないよう、各国当局者は協調して、素早く的確に、政策を進めていく必要がある。今のところ、我が国政府の対応に問題は見られない。ただ、2つほど注文がある。

 1つは、麻生総理大臣や閣僚が本問題について発言するとき、「大変な事態になった」というような深刻な顔は、できるだけしないで、自信を持って、明るく振舞い、国民に安心を与えることである。幸い、日本の金融界は、1990年代のバブル崩壊の苦しみから立ち直って日が浅いこともあって、アメリカの住宅バブルには深く引き込まれずに済んだ。今回、日本経済が無疵で終わるわけではない。しかし事態を深刻にしないためにも、国民に不安を与えないような政策姿勢をとることが大事なのである。

 もう1つは、近隣アジア諸国との協調である。中国、インド、韓国などいずれも金融危機の影響を受けてはいるが、潜在的に経済を立ち直らせる大きな力を持っている。したがって日本は、従来と同じようにG7とかG8の場だけで政策協調するのではなく、これら近隣諸国と経済政策面で従来以上に緊密な連携を図り、アジア発の世界経済回復を実現すべきだと考える。それが、アジアひいては世界の安全保障の確保にもつながるのである。
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