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2008-12-24 18:50
「実体経済の悪化」の「社会不安」への転化が懸念される中国
増田 雅之
防衛省防衛研究所教官
中国の政府関係者・専門家等との意見交換のため、北京に1週間出張した。滞在期間中、中国の専門家との意見交換の中心テーマの一つは昨今の金融危機についてであり、それが中国社会に与える影響であった。北京の街を散見する限り、金融危機の影響はさほど大きくないようにも見えた。しかし、関係者や専門家の見通しは極めて厳しいものであった。11月25、26付け本欄ですでに紹介したように、金融危機の深刻化に伴い大輸出先の米国の景気が落ち込み、中国の輸出企業は減産を余儀なくされ、南部沿海部の工場の閉鎖が相次いでいる。その結果、中国の雇用情勢は厳しいものになっている。
北京での意見交換では実体経済の悪化、とくに雇用情勢の悪化が、中国の社会不安を惹起する可能性への危惧が多く示された。国内の研究会やシンポジウムでは、今回のグローバルな金融危機について、中国との関連で言えば、それを単に経済現象の一つとして捉えるのではなく、中国の社会安定との関連性で議論されることが多くなっているという。こうした文脈で言えば、中国の金融危機への対応は多岐にわたる。すでに中国政府は、実体経済の悪化を食い止めるべく、内需拡大を促すマクロ政策の大幅な調整を実施に移している。
しかし、中国の専門家の見通しは厳しく、2009年の経済成長率は本年のそれを2%も下回るとの推測も示されている。失業率については、2009年に7%を超えるとも言われる。こうした状況において、中国が採るべきいま一つの対策は、社会安定を維持すべく民生問題等の「非経済」イシューに多くの政策資源を振り向けることである(『今晩報』12月24日)。例えば、中国社会のガヴァナンス強化のため、各種の社会組織の機能強化を図り、民衆の不満の暴発を回避することの重要性が強調される。しかし、同時に、38万を超える社会組織が社会不安の温床となることを回避すべく、それへの行政監督も強化されるという。
グローバルな金融危機が長期化するに伴い、「実体経済の悪化」の「社会不安」への転化というリスク連鎖を如何に食い止めるのかという問題が、すでに中国の政策サークルでは議論の中心になっているようである。しかし、リスク連鎖を食い止める良策を見出すことは決して容易ではない。クリスマス(聖誕節)期間中も、宗教団体等を受け皿として、増加する失業者の不満が非合法活動に転化しないように、各地で安全管理工作が強化された。
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