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2009-01-05 00:01

「各国協調」から「世界一体」へ

亀山 良太  自営業
 歴史を振り返ると、金銀財宝こそが富と考えられていた時代があり、戦争によって領土を拡大し、多くの金銀財宝を確保することが国力増進の道であるとされた。やがて経済の規模が金銀財宝でまかなえないほど大きくなり、ヒト・モノ・カネの移動が自由になると、領土拡大のための戦争はまったく割の合わない商売になり、かわって経済力がものをいうようになった。その間、農耕・牧畜によって安定した食料を確保した人類は、人口を爆発的に増加させ、科学の発展によって寿命を飛躍的に延ばしてきた。そして、ついに1つの限界点まで到達してしまったのが、現在の人類のおかれた立場である。

 われわれは、武力の時代も経済力の時代も「国境」という枠で仕切って「国益」でものごとを考えてきた。ところが、21世紀になって直面している深刻な問題、すなわちエネルギー問題、食糧問題、地球温暖化問題等は、いずれも地球という惑星がどれだけの人間を養うことができるか、というキャパシティーの限界の問題である。この問題には国境はなく、国益を奪い合っても、何も解決しない。株価がどんなに上がっても、地球の温度は下がらないし、国境線をどう引きなおしたところで、マグロの数が増えるわけでもない。

 各国政府は、一応国際協調路線で臨む姿勢をみせてはいるが、どう考えても理屈に合わない排出権取引とか、バイオエタノールに話が行きつくところをみると、結局のところ新たな市場の創出による経済効果を狙った思惑先行だと言わざるを得ない。そもそも「各国協調」などという言葉が踊るのは、もともとシームレスなはずの問題に「国境」とか「国益」という枠をはめているからだ。つまり、依然としてこれまでの姿勢のまま、問題解決にあたろうとしているわけだが、実はそのこと自体が問題なのである。

 地球をもうひとつ調達できない以上、この限界点と折り合いをつけていくことが、21世紀の人類の新たな挑戦となるはずだ。そのためには、まず「各国協調」という旧態依然の姿勢を排除し、「世界一体」という斬新な姿勢で臨まなければならない。今世紀の人類は、「ナショナル」な安全保障や経済競争を超えて、真の意味の「グローバル」な利益を追求しなければならず、その意味で人類はその英知を試されていると言えよう。日本はそれをリードする立場にたつ資格があるし、能力も有していると思うのだが、それは新春の初夢だろうか。
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