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2009-03-12 08:55

(連載)オバマ政権の東アジア政策とそのプライオリティ (2)

関山 健  東京財団研究員
 まず第一に、オバマ政権にとって、東アジアでのトップ・プライオリティは中国との協力関係強化にあると言えよう。多国間主義に基づき国連や関係国と足並みそろえてイラク・アフガン問題はじめ国際社会の問題を切り抜けたいオバマ新大統領にとって、安保理常任理事国たる中国の協力は不可欠であるし、未曾有の金融危機で国債を乱発するアメリカにとって、最大債権国となった中国がいわばアメリカの安定的国債消化の鍵を握っているのは言うまでもない。

 気候変動問題についても、中国抜きでは実効性ある枠組みとはならないし、そもそも中国抜きの枠組みにはアメリカ国内の了解が得られまい。いずれの優先課題解決においても、中国の協力は不可欠なのである。では、中国側は、オバマ政権の対中政策をどう見ているのか。中国共産党中央の外交筋は筆者に、「クリントン国務長官の最初の外遊日程に中国を含めたことは、中国重視の現れと評価している」と語った。アメリカの国務長官が最初の外遊先に日本を選ぶことに驚きはないが、最初の外遊日程に中国を含めてきたことは大きな意味があるというのだ。

 一方、中国国内の世論では「バイ・アメリカン条項」に代表されるアメリカの保護主義的な動きを強く警戒する声が広く聞かれる。実際、オバマ大統領は胡錦濤国家主席との電話会談で対米貿易黒字削減を迫ったとされるし、ガイトナー財務長官も「中国が為替操作をしていると、オバマ大統領は信じている」と批判している。「1990年代のクリントン政権が当時の日本に強硬姿勢で経済開放や貿易摩擦解消を迫ってきたように、オバマ政権が今度は中国をやり玉にあげるのではないか」(吉林大学教授)と心配する向きは少なくない。

 実際のところ、今後の米中関係はどのように展開していくのか。クリントン国務長官の訪中時に米中戦略対話の範囲を従来の経済問題から政治・安保問題へと範囲を拡大することが合意されたが、今後はこうした枠組みを使いつつ、お互いの利害を綱引きしながらも、関係強化の方向へ向かうと筆者は見ている。(つづく)
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