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2009-03-13 08:43
(連載)オバマ政権の東アジア政策とそのプライオリティ (3)
関山 健
東京財団研究員
つぎに日本だが、クリントン国務長官が上院外交委員会指名承認公聴会で「日米同盟はアジア政策の要石」と持ち上げれば、オバマ大統領も日米首脳会談で「東アジアの安全保障の礎石」と日米同盟堅持を約束した。クリントン国務長官の最初の訪問国は日本であったし、オバマ大統領がホワイトハウスに迎えた最初の外国首脳も麻生総理だった。オバマ政権が気持ち悪いほど日本重視の姿勢を繰り返し打ち出すのは、何故だろうか。こうした一連の対日重視姿勢について筆者は、中国との協力関係強化の布石として、まずは「Japan Passing(日本はずし)」を心配する日本を安心させるための「Japan Flattering(日本おだて)」だと見ている。
金融経済問題やイラク・アフガン問題など喫緊の課題に各国の協力を得たいと考えているオバマ政権にとって、ひと筋縄ではいかない中国から協力を引き出すことは、東アジア政策の最優先課題である一方、中国との関係強化を焦ることで日本のひがみを買い、織り込み済みの日本の協力を失うことは避けたいということであろう。日本は、中国に次ぐ米国債保有国であり、非常任ながら向こう2年は国連安保理メンバーなのである。中国と関係を強化しつつ、日本もつなぎとめておけるなら、国務長官外遊日程の最初に日本を持ってくること、日本で拉致被害者家族に会うこと、ホワイトハウスに来たいというレームダックの麻生総理を迎えること、各種発言で日本に耳触りのよい美辞を並べること、そのいずれの外交パフォーマンスも、オバマ政権にとってはお安い御用だと言える。日本としては、その外交パフォーマンスの先に来る同盟国としての責任と負担に耐えうるかを、きちんと議論せねばなるまい。
最後に、朝鮮半島だが、朝鮮半島については、オバマ政権発足後、関連人事がなかなか固まらず、対北朝鮮政策の方向性が出てくるのにも、時間がかかっていた。先のアジア・ソサイエティーでの演説において、ようやくクリントン国務長官が「北朝鮮が核計画を完全廃棄する用意があれば、国交正常化や平和条約の交渉に応じる」と語り、恒久的な平和条約締結にも言及した。多国間協力により国際問題を解決していくアプローチを採るオバマ政権は、北朝鮮問題においても6カ国協議の枠組みは踏襲していく見通しだ。ただし「人事停滞の最大の理由は、オバマが北朝鮮どころではないため」(日系紙ワシントン駐在員)という見方もあり、オバマ政権にとって、北朝鮮問題は決してプライオリティの高い問題とは言えない。
これに対して、北朝鮮も韓国も、それぞれ期待と不安をもってオバマ政権の朝鮮半島政策の出方を注目している。対北朝鮮強硬路線を採る李明博政権の韓国は、同盟国重視の姿勢を示すオバマ政権が、北朝鮮に圧力をかけることを期待している。しかしアメリカが、一方で6カ国協議の枠組みを維持すると言いながら、他方で実際には自分達の頭越しに北朝鮮と二国間協議を行って、経済協力などのツケだけ回されるのではないかという懸念もある。クリントン前民主党政権下で自国に有利な米朝交渉を勝ちとった北朝鮮は、再びオバマ政権からも有利な条件を引き出そうとチャンスを伺っているのだが、他方で米国の対北朝鮮政策における李明博政権の影響力が増すことを恐れているという(中国朝鮮半島観測筋)。北朝鮮が最近ミサイル発射に向けた動きを明らかにしているのも、こうした思惑のなかでの精一杯の揺さぶりと見ることができ、実際の発射にいたるかどうかも、アメリカの出方を伺いながらになるであろう。実際、オバマ政権下の北朝鮮問題は「壊れたテープレコーダー」のように、クリントン政権時代と似た交渉をまた繰り返す可能性も高く、その場合の焦点は、やはり軽水炉提供の行方であろう。(おわり)
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