外交円卓懇談会

第43回外交円卓懇談会
「ウクライナがみる黒海地域の安全保障と安定」(メモ)

 第43回外交円卓懇談会は、ミコラ・クリニチ駐日ウクライナ大使を報告者に迎え、「ウクライナがみる黒海地域の安全保障と安定」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2008年11月19日(水)午後3時より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「ウクライナがみる黒海地域の安全保障と安定」
4.報告者:ミコラ・クリニチ   駐日ウクライナ大使
5.出席者:15名

6.報告者講話概要

 ミコラ・クリニチ駐日ウクライナ大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

 黒海地域はヨーロッパとアジアの中間に位置し、歴史的に東西交流の接点であった。今日では、さらにエネルギー回廊としても国際社会から注目を集めている。ソ連崩壊後、大国だけではなく新たに独立した小さな国々の重要性も高まっており、黒海地域をめぐる地政学的情勢は大きく変化している。この地域の安全と安定のためには、OSCE(欧州安全保障協力機構)、NATO(北大西洋条約機構)、ESPD(欧州安全保障防衛政策)を掲げるEU(欧州連合)が3本柱であり、それを補完する地域機構としてBSEC(黒海経済協力機構)とGUAM(グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバ)も重要な役割を果たしている。いかにしてこれらの枠組みを包括的かつ有効に活用していけるかが課題である。ある一つの地域における平和はグローバルな平和の一部分であり、そうした観点から黒海地域情勢を見る必要がある。
 OSCEは一部では過小評価されているが、信頼醸成措置を中心に発展してきており、欧州の安全保障にとって独特な役割を果たしている。EUについては、ウクライナは加盟国ではないものの、一層緊密な協力関係を構築していこうとしている。ウクライナは、ヨーロッパ市場への進出を視野に入れて、EUとの間で自由貿易協定の交渉も行っている。本年9月に開かれたEUウクライナ首脳会議は一つのブレイクスルーと位置づけられるものであり、ビザなし交流に向けた協議も行われている。
 NATOについては、ウクライナはCIS諸国の中で最も早く「平和のためのパートナーシップ(PfP)」に署名した。また、2003年の国家安全保障法の中で、NATO加盟をウクライナの安全保障の最終的な目的と規定しており、NATO加盟に向けた国内の法的基盤も存在している。しかし、民主主義的制度が欠如しているということで、NATO加盟は認められず、機会を逸してしまっていた。その後、オレンジ革命を経てNATO加盟の意思をより明確に表明し、ウクライナとNATOの間の対話を強化してきた。本年4月のブカレストでのNATO首脳会議では今後の明確な道筋は示されなかったが、遅かれ早かれ加盟することができると考えている。12月のブリュッセルでのNATO外相会議で議論される予定だが、アメリカが最も積極的に支持している一方で、ウクライナに「メンバーシップ・アクション・プラン(MAP)」を付与することに消極的な国も多く、コンセンサスはできていない。その背景にはロシアの猛烈な反発がある。
 ウクライナがNATOに加盟すべき理由は、(1)集団安全保障は一国だけによる安全保障よりも安価で信頼できること、(2)PKOをはじめとしてウクライナがNATOに事実上参加していること、(3)ウクライナは決して中立たり得ないこと、(4)ウクライナは軍事産業など技術面で発展した国であること、(5)ウクライナが有している巨大な軍隊の改革が必要であること、(6)ウクライナは民主主義国であること、の6点である。
 ウクライナはBSECやGUAMといった地域機構にも積極的に貢献するつもりであるが、これらの機構が黒海地域の安全と安定に寄与するためには、経済面だけではなく政治的な関与が一層必要である。

(文責、在事務局)