外交円卓懇談会

第48回外交円卓懇談会
「6カ国協議の手詰まりをどう打開するか」(メモ)

 第48回外交円卓懇談会は、ジェイムス・フォスター元国務省朝鮮半島部長を報告者に迎え、「6カ国協議の手詰まりをどう打開するか」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2009年4月10日(金)午後3時30分より午後5時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「6カ国協議の手詰まりをどう打開するか」
4.報告者:ジェイムス・フォスター   元国務省朝鮮半島部長
5.出席者:24名

6.報告者講話概要

 ジェイムス・フォスター元国務省朝鮮半島部長の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

 我々が直面している最大の危機は、今、金総書記が死亡しても、我々自身にその対応の準備が出来ていないことである。北朝鮮は、これまでの核実験やミサイル打ち上げを見ても明らかなように、基本的にこれらの行動は成功せず、技術力は高くない。しかしブッシュ政権が犯した最大の過ちは、北朝鮮がこれまでの合意事項を守らなかったにもかかわらず、時間稼ぎを助長させ、核兵器生産に必要な核物質の製造等を許したことだ。今では、その核物質がどこに隠されたのかわからず、発見することはほぼ不可能であろう。北朝鮮は核兵器を積んだミサイル攻撃を行えるような技術力は恐らくなく、日本にとっての喫緊の脅威は、例えば日本の港で北朝鮮が船で運んだ従来型の爆弾を核物質と共に爆破させることかもしれない。

 北朝鮮に対して、現時点での軍事的な解決方法は適当ではない。これは100年戦争である。北朝鮮と交渉するのではなく、いかにマネージするかが重要であり、北東アジアの将来を見据えた長期戦略が必要だ。今、日本が北朝鮮問題の解決に向けて成すべきことは、アメリカや中国との協議ではなく、まず韓国との話し合いであり、日韓で朝鮮半島の将来に向けたコンセンサスをつくり、戦略的な利益の共有化をはかることだ。何故ならば、米国はイラクからの撤退、アフガンへの増派など他の国際問題で手一杯であり、中国は今の状況を変えずに金正日政権の存続を望んでいる。米中は直ちにこの問題の根本的な解決に向けた役割を果たすことはできない。もし日韓が両国の関係を改善させることができず、この問題に関して連携を図れないのであれば、北朝鮮問題の進展はない。

 また日本はロシアとの関係改善も必要である。ロシアは6カ国協議では中心的な役割を果たしておらず、朝鮮半島に対する影響力は低下しているが、同時に中国の朝鮮半島支配を警戒していることも事実だ。日本はロシアと北方領土問題を抱えているが、朝鮮半島問題を解決するためには、ロシアの協力も必要である。もし韓国、ロシアそして日本の3国の間にコンセンサスが生まれれば、中国の北朝鮮に対する態度も変わり、北朝鮮問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出すことが可能である。6カ国協議の行き詰まりを打開するには、2者協議(米-中、米-北朝鮮)ではなく、5者による解決(A 5-party solution to the 6-party stalemate)が必要なのである。

(文責、在事務局)