外交円卓懇談会

第73回外交円卓懇談会
「日印の絆:進展するユニークなパートナーシップ」(メモ)

2011年10月5日
グローバル・フォーラム
公益財団法人日本国際フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第73回外交円卓懇談会は、アシュワニ・クマール計画・科学技術・地球科学担当閣外大臣を報告者に迎え、「日印の絆:進展するユニークなパートナーシップ」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2011年10月5日(水)午後3時00分より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日印の絆:進展するユニークなパートナーシップ」
4.報告者:アシュワニ・クマール  計画・科学技術・地球科学担当閣外大臣
5.出席者:20名

6.報告者講話概要

 アシュワニ・クマール計画・科学技術・地球科学担当閣外大臣の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

日印の共有するソフトパワーの共通性

 現在の日本とインドは、国益の一致だけでなくソフトパワーの共通性という特徴も有している。「国家関係は国益とパワー・バランスで決まる」というヘンリー・キッシンジャーの見方は確かに正しい。しかし、パワー・バランスはハードパワーのみならず、ソフトパワーを考慮することが重要である。もともと日印両国は、自由、平等、民主主義といった普遍的価値を共有して、良好な関係を形成する素地を有してきたが、近年はさらに安全保障、経済、精神的繋がりの面でも関係を発展させている。日印両国が世界で比類なきユニークな関係を構築しつつあると考える所以である。

日印の直面する中国の脅威

 日印はアジアにおいて似通った外部環境を有する。日本は中国という隣国を有し、政治体制の相違や領土問題の課題を抱えている。一方、インドはパキスタンやアフガニスタンという隣国を有し、核やテロの脅威に直面している。さらに両国は、南シナ海やインド洋に進出しようとする中国の脅威に直面し、安全保障協力を進展させている。経済面においては、両国はアジアをリードする経済大国であると同時に、中国を最大の貿易相手国としている。しかし、インドにとって中国は経済発展競争上のライバルでもある。日印関係とは異なり、印中関係は、経済面においても国益が衝突する契機を含んでいる。

近年の日印交流の進展

 日印は経済関係を順調に発展させてきた。2006年に「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」が結ばれ、また、本年8月からは包括的経済連携協定も発効したので、10年後の関税撤廃を目指して貿易が促進されるだろう。また日本のODAによって、インドではデリー・ムンバイ間の貨物専用鉄道建設計画とデリー・ムンバイ間産業大動脈構想という、総額約900億米ドルの2つの巨大プロジェクトが進行中である。2007年には、訪印した安倍首相がインド国会にて行った「二つの海の交わり」と題するスピーチがインド国民に大きな感銘を与えた。国全体が日印関係の進展に大きな期待を抱き、インド国民は大震災、津波、原発事故の三重苦に見舞われた日本の人々に対して、心からの同情の念を寄せた。日印の精神的繋がりは、両国が今後あらゆる分野の関係を進展させる土台となることが期待される。

日印パートナーシップの深化

 普遍的価値を共有する日印両国は、気候変動、パンデミック、貧困、テロ、紛争、安全保障など様々な地球規模の課題に対し、共通の目的を持って立ち向かうことができる。地球規模の課題の解決には長い時間を要する。日印が自由と社会正義を探求しながら、遠い将来まで共に歩むことを期待する。日印の首相が会談する年次サミットのほか、外相会談などの対話機会を戦略的に設定し、パートナーシップのさらなる進展に努めるべきである。私たちは重要な節目に立っており、まさに今こそ行動すべき時である。

(文責、在事務局)