国際政経懇話会

第209回国際政経懇話会
「現下の国際情勢の問題点」(メモ)

 第209回国際政経懇話会は、岡崎久彦岡崎研究所理事長・所長を講師に迎え、「現下の国際情勢の問題点」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2008年11月20日(木)午前8時より10時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「現下の国際情勢の問題点」
4.講 師:岡崎 久彦  岡崎研究所理事長・所長
5.出席者:20名

6.講師講話概要

 岡崎久彦岡崎研究所理事長・所長の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

 大統領選でオバマ氏が勝利したことで、ワシントンは興奮した雰囲気に満ちている。人種差別は米国の傷であったが、黒人大統領の誕生によって米国にモラル的な権威が出て、強固な立場を手にすることができた。今後米国は、中国のチベット政策などを批判する際、権威をもって発言をすることができる。日本では、オバマ陣営の対日政策の薄さを憂慮する声もあるが、日本政府は選挙戦の最中からマケイン、オバマ両陣営の政権入り候補者に積極的にロビー活動を行ってきた。先の大戦では、日本において米国研究が乏しく、海軍で最も米国通であった山本五十六が、戦略上最も行ってはいけなかった真珠湾攻撃をしてしまった。別の形で開戦していれば、あのような結末にはならなかったであろう。しかし、ニクソンショックや90年代の日米経済摩擦を経て、日本の対米外交はかなり進歩したといえる。
 今後の問題は、オバマ政権のアジア担当がどのような布陣になるかである。現在、政権入りが取り沙汰されているメンバーの中で、特に懸念されるのは、ジェフ・ベイダー氏である。クリントン政権ではアジア担当ポストを親中派が占めており、98年のクリントン訪中ではいわゆる「3つのNO」政策を中国に約束するという非常に疑問のある政策をとった。米国の対アジア政策は、国務省のアジア・太平洋担当とNSC(国家安全保障会議)のアジア部長などが核となって行われるが、98年当時、NSCのアジア部長だったのがベイダー氏である。ベイダー氏の論文を見ても、日米同盟については一言もなく、日米中三ヶ国でアジア政策を進めるべきだという論調である。日本としては、例えば国防総省など、政権内の親中派以外の勢力に働きかけるなどして、オバマ新政権との関係を深めていくべきであろう。
 今回の経済危機に関しては、グリーンスパン前FRB(連邦準備制度理事会)議長のように「百年に一度の津波」と称して良質な評論を展開する人もいるが、「自由放任主義が悪い」というだけでどうするかという議論のない、結論のみえた論調が多い。全新聞の8割が民主党系の米国では、経済危機の責任をレーガン、ブッシュ政権以来の自由放任主義に押し付け、オバマ支持を訴えるという形で大統領選と絡めており、アメリカの新聞の質は悪い。しかし、当初反対の多かった公的資金投入問題も、他に打開する手段がなく、みんな賛成になったという点は興味深い。公的資金投入により、金融危機の山場は去ったようである。今後は実体経済の不況にどう対処するかが焦点となっていくであろう。国際的には、アイスランドなど一部の国が懸念されているが、これらはIMFが救うことになるであろう。ただし、中国はどのようになるか、いまだよくみえてこない。この危機の中で日本は一番落ち着いた状態にあるといえる。
 世間では、米国が衰退し、ドルが基軸通貨でなくなるのではないか、ロシアやイランなどの影響力が増してくるのではないかといった「米国衰退論」がセンセーショナルに展開されている。しかし、過去の例をみても、5年~10年で基軸通貨が変わることはなく、またロシアやイランの影響力の増大などに関しても、石油価格がピークの時にそうした論評が活発だったに過ぎず、現在の状況を正確に示したものではない。なにより、大統領選後、ワシントンは沸き立っており、今後、米国は再び盛り返してくる雰囲気に満ちている。

(文責、在事務局)