国際政経懇話会

第242回国際政経懇話会
「ビジネスと外交」(メモ)

 第242回国際政経懇話会は、古城佳子東京大学教授を講師に迎え、「ビジネスと外交」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2012年3月21日(水)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「ビジネスと外交」
4.講 師:古城佳子 東京大学教授
5.出席者:18名

6.講師講話概要

 古城佳子東京大学教授の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

経済外交の新しい課題

 戦後の日本の経済外交は、経済大国となることを一つの目標としてきたが、それは1964年のOECD加盟によって国際経済体制にコミットする立場を得たことで達成された。その後は、グローバルな国際経済体制の堅持と経済摩擦への対応を主たる課題として取り組んできた。同時に、世界第2位の経済大国として国際社会に対する義務や責任を求められることにもなったが、日本はODAなどの援助を行うことで、その責任を果たそうとしてきた。しかし、90年代以降、リーマンショック、円高、また世界的な先進諸国の停滞と新興経済諸国の成長という構造変化のなかで、日本のODAの支出純額は世界第5位に落ち込み、その経済外交はその先行きを模索する必要に迫られている。そうした中、日本政府は、2010年に閣議で「新成長戦略」を打ち出し、外務省でも在外公館に「日本企業支援担当官」を設置するなど、より「ビジネス支援」の姿勢を明らかにし始めている。この傾向は、米国、英国などでも見られ、「ビジネス支援」は景気が低迷している各国の経済外交の主流になっている。東日本大震災後の復興、原発事故への対応、円高への対応等の課題にも直面する現在の日本では、景気の回復と雇用の拡大が課題である。そのためには新興経済諸国の経済成長を取り込むための企業の海外展開を促すと同時に、その海外展開によって引き起こされる国内経済の空洞化を回避することも必要とされる。

政府の目標と企業の目標のズレ

 しかし、上記のような目標は、必ずしも政府と企業で共有できているわけではない。企業はグローバル化の中、海外で利益を上げても良いわけであり、政府と異なって国内経済の空洞化に特別の懸念を持っているわけではない。日本国際協力銀行が企業に対して行なったアンケートによれば、企業は海外における生産比率や売上高比率の上昇を必至と見ており、特に国内市場の成長が見込めない現状では、製造業などの中堅、中小企業は海外事業の展開を強化する姿勢をますます強めている。他方、政府は景気回復だけでなく雇用の確保を重視しており、その点で、海外収益の国内への還元、海外からの投資の増加、観光客の招致なども外交課題として取り組む必要がある。

不可欠な自由貿易体制の安定

 こうした現状の下で日本の経済外交がまず追求すべきものは、日本の輸出にとって不可欠な自由貿易体制の安定である。例えば、中国によるレアアース輸出の規制を日本は米欧とともにWTOに提訴したが、日本は今後もWTOを紛争処理手続きとして活用していくべきである。次に、各国経済の10~15パーセントを占める政府調達市場の開放を求めるべきである。特にアジアでは、中国、ASEANなどの多くの国がまだ政府調達協定に加盟していないため、その加盟を働きかけるべきである。他には、海外投資の収益還元や日本のインフラ輸出を支援する体制を整備すべきである。そのためのトップセールス、在外公館の活用なども必要となろう。また、国内の調整、特に強いリーダーシップの下、省庁間の調整を強化する必要もある。

(文責、在事務局)