国際政経懇話会

第249回国際政経懇話会
「普天間基地問題と日米関係」(メモ)

 第249回国際政経懇話会は、森本敏防衛大臣を講師に迎え、「普天間基地問題と日米関係」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2012年10月3日(水)正午より午後1時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「普天間基地問題と日米関係」
4.講 師:森本 敏  防衛大臣
5.出席者:35名

6.講師講話概要

 森本敏防衛大臣の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

米軍再編計画から見える米国の国防戦略

 2011年に示された新しい米軍再編計画では、海兵隊の機能と再編(リバランス)に焦点が当てられ、従来、「点」に集約されていた海兵隊の抑止力を「面」として広げる配備を目指している。しかし、このリバランスには陸海空軍を含む米軍全体が決められたわけではなく、現在まではグアムを戦略拠点とする海兵隊の再編計画がゆっくり進行していることのみである。同計画においては、アジア太平洋を最優先にしつつも米軍をアフガニスタンから撤退させた後、イラン対策に専念したいとの意向が伺われており、米国の限られた国力を考慮すると、中東と東アジアの二正面作戦の同時遂行には無理があり、当面のところ、東アジアでの紛争の発生は避けたい意向と思われる。そのような米国にとって、日米同盟が以前のように高い信頼関係にはなく、普天間問題の行き詰まり、なかなか結願しないTPPなどは憂慮すべき事項になっている。さらにわが国の原発政策が大きな懸念事項として登場しつつある。日米両国の原子力協力を前提として国際的な核秩序についてリーダーシップを取りたいと考えている米国にとって、日本の原発政策の変更は受け入れ難いものであり、2018年の日米原子力協定の更新を視野に入れて、米国の懸念は我々の想像以上のものである。日米関係の現状は、このような厳しい状況下にあり、日本としては同盟関係の再構築が急務である。

普天間基地問題の現状

 沖縄へのオスプレイ配備に対する抗議行動は、地元の安全性に対する懸念から生じたものであると理解できるが、政治現象として見た場合には、16年半に及ぶ普天間基地問題の行き詰まりや、民主党政権の対応へ向けた不満の累積された結果であるとも見受けられる。現在、政府としては沖縄県知事から提出された「環境影響評価に関する意見書」への補正作業の最中であるが、沖縄県からは、他にも那覇空港第2滑走路の建設や、嘉手納以南に集中している土地返還に係る統合計画、経済振興策、普天間基地固定化の回避などの要請も受けている。これらへ回答するに際しては中長期的展望が必要であり、その際にはオスプレイに焦点を絞った問題解決ではなく、FRF(Futenma Replacement Facilities:辺野古沖施設)問題全体を解決するシナリオを政府として示す責任がある。そのためには、普天間基地問題を解決しようと努力しておられる沖縄県知事などに配慮した政治的、経済的環境づくりもすべきである。

西南方面の戦略環境変化

 日本には約6850の島嶼がある(うち、約400島が有人)が、そのうちの約1000島が鹿児島から沖縄に至る南西方面にあり、それが島嶼防衛の対象となる。島嶼防衛は、状況の変化に応じて防衛力を柔軟に展開する動的防衛力による対応がふさわしい。具体的には、オスプレイ配備など米軍の抑止機能に加え、我が方の努力として湾岸監視部隊の展開や、F-15戦闘機の増強、E-2C早期警戒機の配備、機動展開訓練等が挙げられる。現在、問題となっている尖閣諸島事態への領海警備について言えば、理論的には警察作用と国防作用の2つの作用があり得るが、まずは海上保安庁と警察による警察作用で対応し、自衛隊は警戒監視活動をすすめているところであり、中国に挑発(provoke)の機会を許さないとともに、過剰反応を避け、日本が挑発したとの口実を中国に与えないことが大切である。それ以外のあらゆる事態に対応するシミュレーションを行っており、関係省庁と協力しながら最も国益となるような対応を考えている。

普天間基地問題解決に向けた課題

 FRFの実現は、16年半の間、日米間で何度も明文で合意されてきたことであるが、これを一歩一歩進めていく以外に日米同盟の真の再構築の道はない。私は任期を通じて、第一に、オスプレイ問題とその背後にあるFRF問題の解決への道筋をつけ、第二に、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直しを通じ、「周辺事態法」を改正することで、日米同盟の「質」と「量」を拡充させたいと考えている。その先には、集団的自衛権という問題が控えているが、そこに至るまでの、この二つの大きな問題に道筋をつけるのが、自分の任期中の最大のテーマだと考えている。

(文責、在事務局)