国際政経懇話会

第271回外交円卓懇談会
「日本を取り巻くエネルギー・鉱物資源の状況」

 第271回国際政経懇話会は、河野博文石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)理事長を講師にお迎えし、「日本を取り巻くエネルギー・鉱物資源の状況」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2014年12月15日(月)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室(チュリス赤坂8階803号室)
3.テーマ:「日本を取り巻くエネルギー・鉱物資源の状況」
4.講 師:河野博文 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)理事長
5.出席者:17名

6.講師講話概要

 河野博文石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)理事長の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、オフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

JOGMECの組織概要・業務内容

 当法人は2004年、石油公団および金属鉱業事業団の統合によって設立された。当法人の目的は資源エネルギーの安定供給確保、有事に備えた資源備蓄、鉱害防止支援を通じた国民の健康の保護・環境の保全等であり、使命は資源価格が高騰し、国際的な資源獲得競争が激化する中、我が国企業による資源開発の支援およびセキュリティの最後の砦としての資源備蓄の両輪を通じ、資源の多くを海外に依存する我が国の安定供給に貢献することである。そのため、当法人の業務は石油・天然ガス・金属資源探鉱・開発支援、資源備蓄、鉱害防止であり、2012年からは法改正により石炭資源探鉱および地熱資源探査ならびに開発業務が追加され、資源全般をカバーする組織へと業務拡大した。

直近の資源・エネルギーをめぐる情勢

 世界の一次エネルギー供給構造の変遷だが、新興国の経済成長、途上国の人口増加により、今後もエネルギー需要は増加する見込みである。2035年までに世界のエネルギー需要は途上国、特に中印を中心に1.5倍に増えると言われている。レアアース需給動向としては、2010~11年の価格高騰を契機に、需要家はレアアース使用量を減少させ、価格も降下して、中国からの輸入割合も8割から6割程度に減少した。ただし、レアアースの中でも電気自動車に使われるジスプロシウム、ネオジム等の重希土は中国への偏在性が高く、また、ハイテク産業に不可欠な素材であるため、安定供給確保に向けた継続的な取り組みが重要である。シェール革命によるエネルギー供給構造の変化に関してだが、シェールガス埋蔵量世界第4位665Tcfの米国はエネルギー輸入量が減少し、余剰となった石油・ガスが日本へ輸出されるようになった。シェールガス革命により、米国はLNGを輸入する必要がなくなり、逆にガス輸出国となったのである。ちなみに米国内ではガス価格が9ドルから4ドルを切るまでに値下りした。それに対し、我が国の一次エネルギー供給構造の変遷としては、東日本大震災以降、原子力代替のための火力発電の増加等により、天然ガス、石油の需要が増加した。火力発電の増加等により、ガス輸入量も増えたが、現在も輸入が可能であり続けるのは米国がシェールガス革命によってガス輸出国となったためである。このように資源輸入量が震災前よりも増加した我が国も、自国海域における資源(メタンハイドレートおよび海底熱水鉱床)開発が近年注目されている。メタンハイドレートは東部南海トラフに日本の2011年のLNG輸入量1,055億㎥の約11年分の資源量が期待されている。また、海底熱水鉱床は、海底面から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿して生成される資源で、銅、鉛、亜鉛、金、銀等を含有しており、日本では主に沖縄、伊豆、小笠原海域に存在している。

JOGMECの業務に関する経験談

 2009年にバグダッドへ出張してイラク石油省幹部と面談し、入札参加資格付与を働きかけ、イラク国際入札資格を取得した。イラクにおける本邦法人による石油開発事業を支援する体制は、当法人が整備している。このイラク国内のガラフ油田を日本の石油会社が落札した。ガラフはイラク南部なので比較的治安は良く、生産は既に始まっており、当法人もかなりの配当を受取れる予定である。また、2003年からメキシコ、2008年から東シベリア、2012年からケニアにおいては、技術的リスクの低減、相手国との関係強化を目的とした資源国政府・現地法人との共同スタディ・探鉱事業を実施している。さらに、アブダビ国営石油会社とのCO2EOR(二酸化炭素圧入増進回収)等、2000年に締結した技術協力覚書に基づく長年にわたる技術協力事業を通じ、産油国との強固な関係を構築し、一部油田の権益延長を実現した。なお、CO2EORとは、二酸化炭素を油層内に圧入することで、原油の生産量・回収率を増大させる技術である。そして、ボリビア政府とのウユニ塩湖におけるリチウム回収試験に関しては、2009年からボリビア政府との協議開始、2011年から実証試験を行い、試験結果に基づくリチウム製造プロセスに係る技術プロポーザルを提示した。そしてボリビア政府とウユニ塩湖リチウム資源産業化に向けた協力覚書を締結した。このウユニ塩湖のリチウム埋蔵量は世界最大である。

(文責、在事務局)