国際政経懇話会

第286回国際政経懇話会メモ
「グローバル化する世界と日本経済の未来」

2016年9月8日(木)
グローバル・フォーラム
公益財団法人 日本国際フォーラム
東アジア共同体評議会

 第286回国際政経懇話会は、伊藤元重・学習院大学教授を講師にお迎えし、「グローバル化する世界と日本経済の未来」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、オフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

1.日時:2016年9月8日(木)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室(チュリス赤坂8階803号室)
3.テーマ:「グローバル化する世界と日本経済の未来」
4.講 師:伊藤元重・学習院大学教授
5.出席者:16名
6.伊藤元重・学習院大学教授の講話概要

(1)世界経済

 世界経済が全体的に低調である。あるアメリカの経済学者が言っていた。「欧州経済は、このままだと日本と同じような状況になる。そして、日本はやはり日本だった。日本経済はアベノミクスで少し動いたように見えたが、結局、長期低迷に戻ったように見える」と。2012年12月に安倍内閣が発足し、デフレからの脱却が掲げられた。当時、中国経済は絶好調だったし、欧州経済そのものが世界経済の足を引っ張ることは無かった。当時は日本だけがデフレに苦しめられていた。日本は今もデフレからの脱却を目指している。しかし、困ったことに、世界経済全体が日本のようになってしまった。世界が上手くいっているときは貿易が活発であるが、貿易の成長率がGDPの成長率よりも下がった。また、中国経済自体が落ち込んだ。長期金利は日欧共にマイナス金利となっている。マーケットは、近い将来、経済が回復するとは考えていないようだ。世界経済は非常に厳しい状況にある。先進国はある程度成熟しているから、かつての日中のように高度成長することは考えられない。

(2)新興国

 新興国が世界経済を引っ張っていくのが世界の順調な姿である。2000年のITバブル崩壊および2001年の同時多発テロで世界経済は低迷した。新興国は、2000年頃、世界のGDPの20%を占めているに過ぎなかったが、2008年には世界のGDPの34%までを占めるようになった。2003~'06年、新興国が伸びて来たのは、中国、インド、ブラジル、不動産、エネルギー資源に資金が集中し、それが行き過ぎたためである。その資金の出処は先進国である。新興国は、中所得国まではなれる。中国は、今やタイよりも1人当りGDPが高くなっているが、先進国の仲間入りを出来るかは不明である。インドネシア、フィリピン、ヴェトナム、ミャンマー、インド等、中所得国にまでなれていない国は、政治と経済が安定すれば、それを達成出来る。

(3)先進国

 先進国は期待されている程成長していない。その要因は3つある。1つ目は人口構成で、団塊の世代の一斉リタイア、少子化による影響があり、これは人類史上初の事態である。これがどこまで需要に影響しているかは未知数だ。消費者は、老後の心配で消費を控えているのかもしれない。2つ目はリーマンショックである。リーマンショック後、米国は金融の維持に資金投入した。しかし、V字回復はせず、回復が遅れた。そして3つ目はサプライサイドであり、先進国の社会を引っ張るような技術革新が弱い。ゴードン教授曰く、1880年代~1980年代の米国のTFP(Total Factor Productivity)は高かった。1880年頃に米国の多くの家庭、工場に電力が供給されるようになった。しかし、1980年を境にして、社会を引っ張るようなイノベーションは生まれなくなった。ネットやPCには、電力、自動車、航空機程の影響力は無い。TFPの低い中で、いくら頑張っても無意味である。日本は米国よりも10年遅れてTFPが下がっている。

(4)技術革新

 技術革新に関してだが、人工知能、IOT、ビッグデータは先進国が直面している課題である。全ての自動車をCO2排出をしない自動車に替えれば、日本の自動車産業は安泰かもしれない。しかも、2080年までに、CO2排出量を90%削減できる。なお、人工知能で最初に失職するのはアナリストかもしれない。近い将来、人工知能が分析してレポートを提出するようになっているかもしれない。先進国が直面する人材不足問題は、人工知能によって解消される可能性がある。

(文責、在事務局)