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2009-05-13 08:23

(連載)「アジア通貨基金」設立の意義とそのための課題(1)

関山 健  東京財団研究員
 5月3日、インドネシアのバリ島で開かれたASEAN+3財務大臣会議は、事実上の「アジア通貨基金(AMF)」設立に向け、具体的な行動計画に合意した。現在の世界金融危機に対して、4月に行われた金融サミットでは国際通貨基金(IMF)の強化を議論した。IMFは、加盟国のマクロ経済監視による「金融危機の予防機能」と外貨不足に陥った加盟国への融資による「金融危機の対応機能」を担っている。確かに、国際金融の安定にとって、IMFが果たすべき役割は重要なのであるが、しかし、IMFだけでは万全でない可能性もある。IMFを補完して、アジア域内の外貨不足に対処するために、アジア諸国が協力する枠組みが存在することは好ましいことだ。

 韓国メディアも去年の10月に、「豊富な外貨準備を持つ韓国、中国、日本の3カ国が軸となり、輸出低迷などによるドル資金不足に対応し、外貨準備の共有チャンネルを確保すべきだ」とアジア通貨基金の創設を一斉に取り上げていた。そもそも、アジア通貨基金構想は、1997年のアジア通貨危機の際に、日本が積極的に提唱した考えである。しかし、当時は、東アジアにおける自国とIMFの影響力低下を恐れたアメリカがアジア版IMF構想に反対し、また、通貨金融危機の影響を受けていなかった中国も日本の影響力拡大を好ましく思わず、消極的であったため、結局アジア版IMFは実現しなかった(と日本では理解されている)。

 日本は、1997年にアジア版IMF構想が頓挫した後、これに代わるものとして、対外債務の返済が困難になった国にドルを融通する「チェンマイ・イニシアチブ(CMI)」の構築を主導し、現時点では16本の二国間協定がASEAN+3諸国の間で締結されている。今年2月に開催されたASEAN+3財相会議において、(1)CMIの総額を800億ドルから総額1200億ドルへ増額すること、(2)域内の経済や為替、金融監督を一元的に監視する独立した事務局を設立すること、(3)二国間協定の内容を一本化し、支援決定時に関係国が1カ所に集まって意思決定する仕組みを整えること、を既に合意していた。いわゆる「CMIのマルチ化」である。

 先日インドネシアで開催されたASEAN+3財相会議では、この計画を年内に実現するために、(1)資金総額1200億ドルのうち、日中韓で全体の8割を負担すること、(2)監視活動の基盤となる専門家会合を開催することが合意された。(つづく)
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