他方、安全保障の観点からみて、今後とも重要となるのは人工衛星である。英語では人工衛星の別名を "eye in the sky”というが、この呼び名がすべてを物語っている。すなわち、超高度から地球上をくまなくモニターするといった行為が、伝統的な安全保障のみならず、非伝統的な安全保障においても極めて重要となってくるからである。「宇宙空間には、地上の論理がそのまま反映される」ということの例証が、人工衛星のこの機能に他ならない。伝統的な安全保障、たとえばミサイル防衛に際しては、偵察・警戒等の機能は不可欠であろうし、非伝統的な安全保障、たとえば気候変動、環境問題、海賊等の問題に関しては、衛星によるデータ収集・解析は、地上では不可能な現状分析を可能にしてくれる。衛星なしにこれらの問題への対策は不可能である、といっても過言ではない。ちなみに、こうした衛星に活用される技術が、元来軍事用に開発されたものであり、のちに民生用に転用されたことはいうまでもない。