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2009-10-02 10:57
(連載)新政権に期待する(2)
内海 善雄
前国際電気通信連合事務総局長
当然のことながら、野党であった民主党には、産業界や各種の利益を代表する団体とのパイプも細い。むしろ、それは、自民党的な既特権集団の利益擁護を廃するということで、否定さえされている。このような大方針だから、民主党において民意を汲むメカニズムは、個々の議員による選挙区での選挙民との接触が中心になる。それは、民主主義の基本であり、国民視点の政治として理想的ではあるが、しかし、すべてのことが巨大化して組織化、細分化され、プロが取り組む近代国家の統治を、スイスの小コンミューンで行われるような原始民主主義的な仕組みでやって行けるのか、多少の疑問が残る。
各議員の努力の結果、民意を汲み取ることができても、それが政府の政策として反映、結実するためのメカニズムが必要であるが、これが、上記各省政策会議になるのであろう。しからば政策会議は、国民と新政権とをつなぐ要であり、この在りようで、新政権の性格が規定されることになる。閣僚の思い切った発言は、力強く、頼もしく、政治ショーとなって、国民にも大変新鮮に見える。閣僚には、過去のしがらみを断ち切り、果断に決断し、勇気を持って行動をとってもらいたい。しかし、全閣僚が自信をもって政策を発言できる根拠は、マニフェストで公約した事柄が、圧倒的な与党の数により、国会で法案として成立することを前提にしている。もし、マニフェストの中身に国民が賛同しなければ、与党議員もマニフェストを金科玉条とすることは困難になるであろう。
政権与党の政策について議論をし、是々非々を問わなければならない野党である自民党は、長く政権与党の座にいたため、いまだ野党としての機能をもたない。官僚の助けを借りて、各利益集団の利益を代表し、予算化することに十二分に能力を発揮した自民党ではあるが、野党となった現在求められている機能は、民意を汲んで与党の政策に反映することである。一日も早く党勢を立て直し、健全な野党としての機能を発揮してもらいたい。
かくして、現時点では、官僚は口を封じ込められ、野党は機能停止の中で、閣僚が全権限を一元的に掌握している、憲政史上でも稀な状況である。今までどこに権限が存在するのか不分明であった自民党政権体制に長く慣れ親しんだ国民は、閣僚に権限が集中した新政権に対して期待を持ちながらも、多少の不安感も感じているところであろう。変わらなければ立ち行かなくなった日本で、閣僚には大いにリーダシップを発揮してもらいたいが、そのためには、内閣に権限の集中が不可欠である。しかし、その権限の行使に真の民意が反映していなければ、いずれは国民から見放されることになる。政権交代過渡期の不安定な状況が早く落ち着き、国論を二分するような大きな問題にも、国民の意見が集約でき、国政に反映できるような効率的メカニズムを一日も早く確立して欲しい。(おわり)
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(連載)新政権に期待する(1)
内海 善雄 2009-10-01 19:07
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内海 善雄 2009-10-02 10:57
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