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2010-11-04 18:31

(連載)メドヴェージェフ大統領の国後島訪問について(1)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 11月1日、ロシアのメドヴェージェフ大統領は国後島を訪問した。日本はロシアに択捉、国後、色丹、歯舞の返還を求めており、1993年の東京宣言では、これらの島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結するということになっている。4島は係争地である。日本側が「日露関係上好ましくない」として、訪問中止を求めてきたのを無視して、わざわざ立ち寄った。ロシア側は「大統領がロシア領のどこに行こうが、外国から問題にされる謂れはない」というが、係争地であるから問題になるのである。

 ブレジネフ時代には、ソ連は「領土問題は解決済みで、存在しない」としてきた。ゴルバチョフ以降、領土問題の存在を認め「話し合う」としてきた。今回のメドヴェージェフの国後島訪問とそれに関連したロシア外務省の説明は、国後島がロシア領として確定しているとの立場に立っている。「領土問題は解決済み」とのソ連時代の立場に戻ったのではないかと思われる。もちろん日本側としてそういう理不尽なロシアの立場は受け入れられない。

 私は、少し前から「プーチン・メドヴェージェフのコンビは北方領土問題を話し合える相手ではない。ゴルバチョフ以前の立場に戻っている」と述べてきた。外務省を含め対ロ関係者の中には、領土問題について「独創的な解決策を」というメドヴェージェフの言葉に幻惑されて、「機会の窓」が開いているなどと言う人もいた。こういう人もようやく目が覚めたであろう。

 メドヴェージェフが国後島を訪問したことで、ロシア側の北方領土についての立場がより強くなる効果は全くない。戦争末期に火事場泥棒として4島を占拠したこと、国際的に4島がロシア領とされる根拠がないことなどには、何の変更もない。日本側の4島返還要求は、正義に基づく要求であり、今後も全く変わらない。(つづく)
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