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2006-05-22 22:56

佐藤氏と小早川氏の議論を読んで

小笠原高雪  山梨学院大学教授
 あらゆる議論の基礎となるのは言葉の正確な理解であるが、それは必ずしも簡単なことではない。私はそのことをさまざまな機会に感じるし、5月22日付の小早川潔氏の投稿を読んだときにも感じた。

 小早川氏は佐藤晶子氏の5月15日付の投稿に対しいくつかの疑問を示され、その脈絡のなかで、「むしろ日本の留意すべきことは、・・・日本文化を如何に伝播するかを真剣に考えることである」と述べておられる。この指摘を読んだ人は、佐藤氏が文化交流に消極的な意見の持主だという印象を抱くであろう。しかし、実際にはそうではない。佐藤氏は「文化交流は、双方向的であればともかく、一方的なものであれば、警戒する必要があると思います」と述べているに過ぎず、この点でお二人はほとんど同じことを述べておられるように思われる。それどころか、佐藤氏がその前に行なった4月29日付の投稿を読んだ人は、同氏が文化交流の意義をきわめて高く評価しておられることを知るであろう。

 「文化交流」「ソフト・パワー」「パブリック・ディプロマシー」などの言葉は来歴も語義も同一でないが、明らかに重なり合う部分を持っている。私はそれらが軍事力や経済力に代替するとは考えないし、市民的自由の制限された国々に対しては早急な効果を期待するべきでないと思う。しかし、国際社会に対する日本の態度やその前提にある思考様式に対する理解を増やし、無用の誤解や曲解の余地を減らす努力は今後ますます重要であろう。「不戦屈敵」という戦略思想の伝統を持ち、人心掌握にも長けた中国のような大国は、かつてのソ連のような大国よりも手強い存在であるかもしれない。平和は疑いもなく大切であるが、平和でありさえすればそれでよいというわけではない。
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