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2020-11-26 19:54

(連載2)またも米大統領選を読み誤った世論調査

中村 仁 元全国紙記者
 世論調査では、バイデン氏とトランプ氏の支持率の差は7㌽ないし10㌽(実際は3㌽)もあるとされました。投票率が66%に達し、120年ぶりの高水準だったところをみると、トランプ支持者が危機感を持ち、投票所に走ったのかもしれません。事後的考えると、一種のアンダードッグ効果のほうが大きかった。トランプ氏は「郵便投票は民主党の不正を助長する。不正があれば、法廷闘争に持ち込む」と示唆していましたから、終盤にかけて、トランプ支持者が結束した。熱狂的な支持者が存在したことの証明です。
 
 逆にバイデン支持者は高支持率に安心してしまった。それでも史上最高の7500万票を獲得したのですから、今後の投票行動の分析を待ちましょう。世論調査は米国が最も進んでいる国です。日本では、敗戦後に米国の支援で世論調査が始まりました。「民主主義の国アメリカで育った科学的な世論調査を日本に根付かせるため、メディアからの相談にも積極的に応じてきた」(世論調査とは何か/岩本裕、岩波新書)そうです。
 
 岩本氏は「世論調査は、有権者の考えを知って、選挙運動に役立てる道具として発展してきた。世論調査は民主主義の礎。選挙が世論調査を発展させた」と、指摘しています。世論調査先進国の米国で、社会分断・分裂が進み、選挙結果の予測が外れるようなったのは、皮肉なことです。米国に比べると、日本は人種間の対立や、暴動を伴うような社会の亀裂もなく、世論調査の正確度が高い原因になっています。
 
 もっとも、「次の首相にはだれがふさわしいか」の世論調査の問いに、4番目位だった菅氏が首相に選ばれました。日本は間接選挙ですから、自民党内部の密室の駆け引きで総裁(首相)が決まります。有権者は密室の様子を知ることはできませんですから、こういうことが起きる。一方、直接選挙は、トランプ氏のような希代のアジテーターが出現し、大衆の不満(錆びついた工業地帯)を背景に大統領に当選し、二度目の選挙でも、あわやの大接戦を演じる。世論調査が難しい時代に入ったことは間違いありません。(おわり)
 
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(連載1)またも米大統領選を読み誤った世論調査 中村 仁 2020-11-25 15:32
(連載2)またも米大統領選を読み誤った世論調査 中村 仁 2020-11-26 19:54
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