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2025-12-22 11:25

(連載1)崩れるのか、非核三原則

岡本 裕明 海外事業経営者
 最近、非核三原則が現状、非核2.5原則ではないかとか、現政権が「持ち込ませず」の部分を削除することに前向きだと報じられています。この重いテーマ、少し皆さんと考えてみたいと思います。もちろん結論は出ません。ただし、私が思うのは「政権が好きに変えることができるのか」という疑問であります。非核三原則、「持たず、作らず、持ち込ませず」は1967年、佐藤栄作首相(当時)が国会で表明し、以降の政権が堅持してきているわけですが、これは政権がそれを維持しているというより国是として国民に広く認識されていることでもあります。

 その背景をもう少し探ってみると意外な盲点がそこにあることに気がつきます。佐藤氏はもともと核を日本に配備する必要があると考えていました。特に中国が1964年に核実験を成功させ、核配備を進めたのに対抗し、日本も持たざるを得ないという議論が生じました。では佐藤氏が考えを180度転換した理由は何か、といえばアメリカの核の傘に入ることをジョンソン大統領(当時)が認めたからであります。つまり非核三原則はアメリカが守ってくれる、アメリカが日本の代わりに核を持ってくれるという大前提があるからこそ成立しているわけで日本が被爆国だから非核三原則があるという訳でもないのです。

 佐藤氏の非核三原則の表明の前である1958年には中国による台湾への武力攻撃、「金門砲戦」が勃発しています。主たる砲撃は1か月半で終わりましたが、その後も散発的に21年間も砲撃をし続けたという歴史があります。この際に中国はソ連から技術を導入して核を持ちたいという意図があった為、日本も当時、それなら日本も必要最小限の核は持つべきではないかという議論が出たのです。よって当時は世論とは別に核の所有は真剣に取りざたされていた経緯があります。その後、そのあたりの経緯はすっかり忘れ去られ、いわゆる非核三原則の標語の部分だけが独り歩きし、国民の多くは「日本は核はダメなんだよね」という理解になっています。もちろん、広島、長崎との結びつきもあります。ただ、ここは政治的背景とは齟齬が生じているように感じるのです。

 では現状、非核三原則は守られているか、といえば最後の「持ち込ませず」が非常に怪しいとされます。つまりアメリカ軍が持ち込んでいるかもしれないし、そうではないかもしれない、だけど調べる手段がないという状況なのです。よってそんなあいまいなものならばいっそのこと、「持ち込ませず」は取ってしまってもよいのではないか、というのが現在の議論なのであります。現政権の安全保障を担当する「官邸筋」がオフレコで記者団に「私は核を持つべきだと思っている」と述べたと報じられています。あくまでも個人の意見というレベルであり、当人は「国論を二分する課題」とも述べたとされます。私の解釈はこの発言は「持ち込ませず」に留まらず、日本が核を保有することを指しているのだと推測しています。この発言は瞬く間に火が付きました。ではなぜ、「官邸筋」がオフレコながら記者を集めてそんな話をしたのか、私は観測気球だと思っています。どうもその気球は撃ち落とされてしまった感が強いようですが。(つづく)
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