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2008-09-23 23:12
もっと真剣に太平洋戦争から学ぶ必要がある
小久保康之
静岡県立大学国際関係学部教授
今年の夏、日本の報道は、北京オリンピック一色となり、例年夏になると多くなる太平洋戦争関連の報道は少なかった。また、グルジア問題に端を発する米欧・露の対立、そして新しい21世紀の国家間闘争の始まりについて、多くの専門家がこの「議論百出」で指摘しているように、日本のテレビ報道は殆ど沈黙し、わずかに新聞が報じているに過ぎなかった。サブプライム・ローン問題も忘れられ、米国経済の動揺を突然のように見せつけられても、国際情勢が大きく揺れていることを実感させる報道は少ない。
冷戦後に誕生した若い大学生にとって、冷戦すら歴史となり、太平洋戦争は遠い彼方の出来事となっている。しかし、太平洋戦争に至る道を検証し、戦争終結までの道のりをしっかりと学ぶこと、つまり日本がなぜあの戦争に突入し、あそこまで悲惨な状況に陥ったのかを学ぶことは、これからの国際社会における日本の位置づけを考える上で重要であろう。
ある民放で、8月15日の玉音放送以降に日本のために殉職していった樺太の電話交換手のドラマを見る機会があった。そのドラマの放映数日前に、主演(?かどうか定かではないが中心人物)の若い女優さんが「かっこいい女の子を演じてます。見て下さいね」と言っていた言葉が頭の片隅に残っており、何をもって「かっこいい」と彼女が言ったのか、しばし考えさせられた。戦後生まれの筆者に、戦争を直接体験したことのない筆者に、戦争を語る資格は無いのかもしれない、とも思うが、国際政治学者として、戦争は悲惨な現実であることを、太平洋戦争を1つの例として教える義務があると改めて感じた次第である。
一部の指導者達が国民不在の議論を続け、最後まで辛酸をなめざるを得なかった一般国民の悲劇と、異例なるご聖断という形を取らなければ戦争を終結できなかった日本の政治システムの未熟さは、今も続いているのではなかろうか。感傷的に書いているのではない。日本の今後を現実的に考える時、太平洋戦争が重要な教訓を残していることをもっと真剣に、そして現実的に考察するべきであろう。北京オリンピックで「感動をもらう」のもよいが、その背後に潜んでいるものを、日本国民はしっかりと考えて欲しい。
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