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2008-09-29 10:17
善悪二元論では国際政治は語れない
廣瀬陽子
静岡県立大学国際関係学部准教授
筆者はコーカサス地域を専門としているため、今度のグルジア紛争勃発後、ずいぶん多くのメディア等の取材を受けた。その際、かなり多くのケースで「グルジアとロシア、どちらが悪いか?」という質問を受けた。筆者は、基本的に国際政治は相互行為によって成り立っており、どちらかが100%悪いということはまずあり得ないことだと考えており、特に今回の問題でも、グルジアとロシア双方に非があると考えていた。そのため、「どちらにも非があるので、どちらが悪いということは言えない」と言っても、「ほんの少しでもどちらがより悪いと思うか」としつこく食い下がられることもあり、そのようなときには辟易した。
どちらかを悪者にすることによって、何のメリットがあるのだろうか。「この点はAが悪かったが、この点はBが悪かった」というように、具体的な答えを出す方がよほど事実に即しており、建設的であると思われる。またこのような善悪二元論は、まさに冷戦的な思考であり、筆者はそもそも広く懸念されている「新冷戦」という考え方に反対であるため、そういう意味からも受け入れ難い。ロシアを悪者にしたところで、国際平和にプラスになるものは何もないと思うのである。
それに紛争で善悪二元論を用いることは、グルジア紛争に限らず、あらゆるケースで和平プロセスを阻害するものと考える。片方が一方的に「悪」とされたら、そちらも相手の「非」を訴えたいであろうし、交渉する気も失せるであろう。国際社会は双方の主張を平等に判断し、単純に白黒つけるのではなく、細やかな事実認定をしていくことが必要だと思われる。そのような姿勢は和平プロセスや世界の安定の基本の第一歩ではないだろうか。
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