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2008-11-26 09:51
(連載)改革開放30年の成功モデルからの脱却?(2)
増田 雅之
防衛省防衛研究所教官
特に、中国の輸出の縮小傾向に拍車がかかりつつある。金融危機の深刻化に伴い、大輸出先の米国の景気が落ち込み、国内輸出企業は減産を余儀なくされている。特に、繊維、玩具などをつくる沿海部の工場の閉鎖が相次いでいる。その結果、失業率も2007年までの低下傾向に終止符が打たれ、2008年には4.2%程度になる見通しだ。中国の人的資源社会保障部の尹蔚民部長は、「(10月以降の)国際経済情勢の変化で、(雇用情勢が)非常に厳しくなっている」と語り、情勢の緊迫化を認めた。また、10月の中国の輸入額は930億9千ドルであったが、伸び率は前月よりも5.7%低下し、輸入の減速感が顕著になってきた。輸入が減少した背景には、国内企業の減産があり、原材料や部品の輸入を減らしていることがある。金融危機に端を発する世界的な景気失速が長期化すれば、こうした低付加価値の労働集約型企業の淘汰は避けられなくなる。
中国の指導部や政策当局は「中国経済のマクロ・コントロールは良好である」と強調するものの、事態は相当深刻である。中国社会科学院金融研究所の劉輝研究員は「経済の下降は今まさに加速化しており、いつ底をつくのか判断し難い。このため将来の中国経済がハードランディングするリスクもある。金融の動揺から世界的な需要の大幅な低下が出現し、今後は停滞期に入る可能性がある。従って、来年の半ばは中国にとって非常に困難な時期となるであろう」(中国証券網、10月24日)と悲観的な見通しを示している。
改革開放30年を迎えたいま、中国は世界的な金融危機という「もっとも厳しい挑戦」に直面している。中国に求められている厳しい挑戦とは、改革開放30年の成功モデルからの脱却であり、金融危機に伴う世界的な景気失速を産業高度化のきっかけにすることである。(おわり)
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増田 雅之 2008-11-26 09:51
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