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2009-01-18 08:06

(連載)日アセアンCEPと日越EPAの意義(2)

関山 健  東京財団研究員
 このような背景のなかで具体的に日本の企業が利用できる部分はどこかとなると、エビや熱帯果物などのベトナム特産の一部の農林水産品が即時関税撤廃されることから、これら農林水産品の輸入業者や消費者にとっては即効的なメリットがあるかもしれない。また、知的財産保護について、日越当局間で協議メカニズムが構築され、ベトナム当局の取締まり強化に日本が協力を約束したことも進歩と言える。ベトナムでの(電気・電子や自動車関連の)部品・中間財の調達に貢献する現地裾野産業の育成に日本が協力を約束した点も評価できる。ベトナムからエビ・イカなどの食品を輸入する日本にとって、その安全と密接な関係のあるベトナムの動植物検疫行政について、情報交換や協議のメカニズムが構築されることもメリットである。

 さらに「ビジネス駆け込み寺」として、ベトナム進出日系企業からの問合わせを一元的に受け付ける連絡窓口がベトナム政府内で指定されるとともに、その連絡窓口と進出日系企業との間のコミュニケーションを大使館や指定機関(JETRO現地事務所と予想される)が取り次いでくれるようになったことも、評価できる。以上をまとめれば、大筋合意の内容では、主要産品の関税撤廃などの即効性を日越EPAに期待することはできないが、上記「ビジネス駆け込み寺」制度の構築といった関税以外のメリットを活用すれば、税関手続き円滑化、知的財産保護、裾野産業育成など、今後の日越ビジネス環境の向上につながる前進が期待されると言えよう。

 他方、日越EPA合意のほかに、日アセアン包括的経済連携協定(AJCEP)が12月1日に発効し、発効国のなかにはベトナムも入っている。日アセアンCEPは、日本とASEAN側の1国が通告を行った翌々月から発効することになっており、ASEAN側は個別に通告を行った国だけが順次その適用を受けることになる。したがって、日アセアンCEPは発効したが、現時点で日アセアンCEPの規定適用を受けるのは、日本、シンガポール、ラオス、ミャンマー、ベトナムだけで、その他のアセアン諸国は今のところ日アセアンCEPの適用は受けていない。(つづく)
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