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2009-01-19 09:41
(連載)日アセアンCEPと日越EPAの意義(3)
関山 健
東京財団研究員
さて、日アセアンCEPの意義であるが、既に二国間EPA(例えば、日越EPA)が主要なアセアン諸国との間に存在する以上、これに加えてアセアン全域をカバーする日アセアンCEPができるメリットは、なにかと言えば、それは累積原産地規則の適用に尽きる。加えて言えば、二国間EPAの締結予定がないカンボジア、ラオス、ミャンマーとの間で、一応EPA・FTAの枠組みが構築されるという点も評価できるかもしれない。
ということで、現時点では、ほとんど実質的な意義を見出しにくいのが、日アセアンCEPの現実である。特に、シンガポールやベトナムなど、既に日本と二国間EPAを持つ国との間では、今のところほとんど意義を見いだすことはできない。具体的には、日系企業の生産ネットワークに欠かせないタイやマレーシアなどといったアセアン諸国との間で、日アセアンCEPが発効していないため、累積原産地規則のメリットがまだ発揮されないからである。
また、日アセアンCEPと二国間EPAとの間では、関税譲許が異なるため、どちらを利用すれば有利なのかの判断が複雑で、特に人手の少ない中小企業では協定の活用に混乱を生じる恐れもある。また、主要アセアン諸国にとっても、日本との間で二国間EPAと日アセアンCEPが併存することから、現場の税関における関税適用や、アセアン諸国での日アセアンCEP原産地証明書の発行においての混乱も危惧される。
日アセアンCEPの評価すべき点は何かとなれば、12月1日の日アセアンCEP発効と同時に日アセアン間の取引に劇的なプラスの変化が起こるとは考えられないが、日アセアン間で累積原産地規則の範囲が広がること自体はプラスであろう。日系企業のアジアでの生産ネットワークの方向性と軌を一つにしていることから、主要アセアン諸国に対する早期の日アセアンCEP発効が待たれる。日アセアンCEPの発効はあくまでも第一歩であり、今後は、投資、サービス貿易、知的財産保護などを含む日アセアンCEPの深化と、二国間EPAとの統合一本化に期待したい。(おわり)
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(連載)日アセアンCEPと日越EPAの意義(1)
関山 健 2009-01-17 22:32
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(連載)日アセアンCEPと日越EPAの意義(2)
関山 健 2009-01-18 08:06
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(連載)日アセアンCEPと日越EPAの意義(3)
関山 健 2009-01-19 09:41
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