こうしたなか、興味深いことに、従来の歴史観や発展モデルを「裏返し」にしたかのような議論が見られるようになった。たとえば、昨年出たローバート・ケーガンの『The Return of History and the End of Dreams』などは、まさにフクシマの議論の「裏返し」である。ケーガンは、「専制が復権を果たした」として、世界の途上国にとって、政治の自由化を伴わない経済発展が有力な選択肢となる以上、世界は今後、民主国家圏と専制国家圏に分かれ、両者の対決は不可避だという。ケーガンは、いわば診断は外れていないが危うい処方箋を書く医者といったところか。たしかに現代世界は、ケーガンの診断を裏付ける事象には事欠かないものの、世界を二つに切り分けるべきかどうかは、また別問題である。(つづく)