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2009-04-12 08:46
(連載)G20ロンドン金融サミットをどう評価するか (3)
関山 健
東京財団研究員
一方で、我々がWTOのドーハ・ラウンドで目撃したとおり、新興国や発展途上国への配慮なくしては、今の国際社会で合意を形成するのは難しい。この点、今回のサミットの最大の勝者は誰かと問われれば、私は「新興国や発展途上国である」と答える。アメリカやイギリスは、確かに自分達の主張の一部を首脳コミュニケに盛り込むことには成功したかもしれないが、何か新しいメリットを得たわけではない。一方、新興国や発展途上国は、このサミットによって様々な支援を得られる可能性が高まり、世銀やIMFなどの国際機関における発言権の向上にも道が開けた。今回のサミットで一番得をしたのは、新興国や発展途上国である。
こうした新興国や発展途上国の立場を代弁する形で、中国が果たした役割は非常に大きい。名目GDP世界第3位であり、外貨準備と米国債の世界最大保有国であり、また現在内需主導の力強い成長が可能な唯一の大市場である中国は、今回の金融サミットでも大きな影響力を有していた。首脳コミュニケが新興国や発展途上国の立場を非常に重視した内容となったのも、彼らの立場を代弁する中国が影響力を発揮した結果であると考えられる。
アメリカ主導で構築された現在の国際金融経済体制を、より民主的で安定的なものに改革していくために、中国が果たすべき役割は重要である。しかし、中国だけでは国際金融経済体制を改革する力はなく、他のG20コア・メンバーとの協力が必要である。特に、現状の国際金融経済体制の改革は、アメリカの利益に反する場面が多いことからすれば、日本、中国、EUが協力して、アメリカを説得していかなければ、改革は進まないだろう。
特に日本と中国は、いずれもアメリカへの輸出に大きく依存しており、世界最大規模の米国債を有するなど、お互いに共通の利害が少なくなく、実は協力しやすい土壌がある、と私は考えている。アメリカへの過度の依存を改め、より安定的な制度を作るためには、まず日中で協力し、そこにEUや他の主要経済国や発展途上国を巻き込んでいくのが良い、のではないだろうか。(おわり)
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(連載)G20ロンドン金融サミットをどう評価するか (1)
関山 健 2009-04-10 08:34
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(連載)G20ロンドン金融サミットをどう評価するか (3)
関山 健 2009-04-12 08:46
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