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2009-07-05 18:05
(連載)梁光烈・中国国防相の発言を読む(3)
関山 健
東京財団研究員
空母に代表されるとおり、中国軍の行く末は日本の安全保障に重大な影響を与えるものである。梁部長が、1時間にわたる表敬の最後に、中国軍の発展方向について、「中国は、自国を取り巻く安全情勢に鑑みて、必要な軍事力を発展させていく。特に、情報化への対応が遅れていると認識しており、その対応を急がねばならない」と語ったそうだ。
朝鮮半島、東シナ海、南シナ海、中央アジアなど、中国の周辺は安全情勢の不安定要素に囲まれている。これに対応するために十分な軍事力の近代化を進めていくということだが、それは多くの安全保障問題で中国と対立的な利害を有する日本から見れば、潜在的脅威の増大に他ならない。
日本は、東アジアの不安定な安全環境に自らも身を置いているという現実を見据えて、少なくともアメリカによる直接介入の期待が薄い局地的な衝突には、自国で対応しうる実力を備え、もって海外からの敵対的な行動を抑止することが、極めて重要である。一方で、北朝鮮によるミサイル発射や核実験を受けて、日本でも策源地攻撃能力を巡る議論がにわかに盛り上がっているが、こうした日本の動きが東アジアの安全情勢に波紋を投げかけ、「安全保障のジレンマ」を起こすのも事実である。
したがって、日本の安全確保のためには周辺の安全環境に対応した実力を整備していくと同時に、周辺国との間で「安全保障のジレンマ」の連鎖的高まりを防ぎ、相互の情報不足による誤解や計算違いが不測の衝突につながることのないように、日ごろから信頼醸成に努めることが欠かせない。日中両国の国防当局が、民間団体の仲立ちにより、政治環境の浮き沈みに左右されることなく佐官級幹部の交流を続けているのも、こうした信頼醸成の重要性を双方が理解しているからだろう。「継続は力なり」である。来年で10周年を迎えるこの事業が、引き続き継続されていくことを期待したい。(おわり)
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