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2025-07-30 11:35

(連載1)価値あるものへの消費

岡本 裕明 海外事業経営者
 日本からカナダに戻ってくると途端に外食に対するワクワク感が消滅します。アメリカでも同じだろうと思います。今更なぜだろうと考えてみたのですが、提供されるフードが当たり前以上の何物でもないからかもしれません。日本ではサプライズ的においしいレストランだらけなのですが、カナダは高い、美味くない、サービスもイマイチなのにサービス料が18%であきらめの境地なのであります。時折行く韓国料理屋。本来であれば客で賑わう午後7時。夏のこの時期に客ゼロ。理由はわかっています。単品の肉料理はほとんどが一皿4000円以上で高すぎなのです。注文した焼肉と冷麺のセットは3000円、焼肉は4枚だけ。顔見知りの店長からはまた来てね、と言われるも「どうしようかなぁ」。

 一方、大賑わいなのが中華系のフードコート。特に非常に美味いと評判の小籠包を提供するある店は午前10時半ぐらいに行かないと席もないし、注文して出来上がるのにも待たされます。中国人もわかっているのでしょう。フードコートにも安くておいしいところはあると。価値あるものへの消費はビジネスの原点なのです。直近2回の訪日はZIP AirというJAL系のLCCに乗ったのですが、結論からすると使い方次第では悪くないかもしれないと思ったのです。フルサービスの航空会社ではミールサービスが決まった時間に決まったものが配膳されます。航空各社はこの差別化を図ってきたわけでビジネスマンによる「〇〇航空の機内食はうまい」といった口コミが評価を支えています。ただ以前から申し上げているように私は昔、飛行機のケータリングビジネスをしていたのでそのレベルはわかっています。なので機内食のために血眼になって航空会社を選ぶのはちゃんちゃらおかしいわけです。

 ZIP Airも機内ミールは有料で提供しています。が、私は2度と食べたいとは思わないし、実際、そのサービスを受けている人は全体の半分か1/3程度の乗客のみです。有料の機内食は決して安くないのにレベルは申し訳ないぐらい低いのです。ではお前はどこを評価しているのか、と思われるでしょう。要は自分の好きな食べ物を持ち込み、腹がすいた時に勝手に食べればよいという自由度に価値を感じたのです。日本とバンクーバーは9時間ぐらいかかりますから2食持ち込みます。1食は普通にデパ地下のようなところで弁当を、2食目はおにぎりセットとかおかずパンのようなものでばっちりなのです。

 つまり価値とは提供されるのを待つのではなく、自らが創造して生み出すことであり、LCCは新幹線の飛行機版のようなものであり、飛行機は移動手段以外の何物でもなく、それ以上の付加価値は自分でカバーすればよいだけの話なのです。私は最近、自分の事業に関して新規事業を立ち上げて手を広げることよりも手持ち事業の質の向上にシフトしています。多分、私だけではなく、多くの日本企業がそうしていると思います。日経や一般紙を見る限り、このところ企業による新製品の発表が減って来たと思います。新製品のプレスリリースは星の数ほどあるのですが、大きく賑わせる記事は減ってきました。一方で各社血眼になって質の向上を伴う販売促進を図っているように感じます。(つづく)
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