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2025-07-31 11:42

(連載2)価値あるものへの消費

岡本 裕明 海外事業経営者
 私の場合、経営するシェアハウスや外国人向けアパートで新規入居がある場合、特段の配慮をしています。例えば入居前の清掃は私が日本にいる限り清掃をしてくださる方と一緒に共同で磨き上げます。特に床はモップではなく、洗剤と雑巾で蓄積した汚れを取り除きます。また家具や調度品も早めの入れ替えを進め、新しい人が入居後には「居心地はどうですか?」と必ず聞くようにしています。外国人はほぼ何らかの注文を付けてくるので少額で済むものなら購入してあげています。つまり基本のサービスプラス御用聞きをして更にバリューアップを図っています。故に退去した方々から「とても良かった」と高評価を頂いているのは滞在中、一定のアテンションをしてカスタマイズしたサービスをしているからでしょう。これは部屋数が多い大規模な施設ではなかなかできないサービスです。

 同じようにカナダのマリーナ事業でもグループホーム事業でもより顧客に寄り添ったサービスを提供することを心がけています。「なぜ看板のない店に人が集まるのか スモールビジネスという生存戦略」(田中森士著)という本があります。この書ではスモールビジネスのだいご味は客と事業主のダイレクトな結びつきで個性的かつ、細かい客対応ができることが特徴的と記しています。その通りですね。

 例えは悪いですが、もしも街中にあるスナックが日本全国チェーンだったらどうしますか?時々ママが変わり、スタッフの入れ替えも激しくて顔も名前も覚えてもらえなければ客はつかないでしょう。「あら、山田さん、1年ぶりじゃないの、いらっしゃい」といわれると覚えてくれていたと思い、顧客は嬉しいのです。一定のファンに圧倒的魅力を感じてもらうことで大企業の商品やサービスと差別化を図っているともいえます。

 ただし、そこで勘違いしてはいけないのはスモールビジネスが必ずしも汎用ビジネスにはならないのです。飲食系事業者で時折その勘違いをされる方がいますが、スモールビジネス経営者のクローンはできないのであります。スナックママの良子さんが2号店のスナック良子を開店しても店長が恵子さんだと1号店の良子さんと連関性は浅くなり、水平展開したとは言えないのです。理由はスナックの酒は何処でも同じ味であり違いは誰がサーブするかしかないからです。寿司屋の2軒目を作るのが難しいのは寿司屋は寿司ネタだけではなく、寿司屋のオヤジとの心地よい空間がバリューアップになるのです。これは人間がAIにそこまで感化されていないとも言えるのかもしれません。日本人の消費に対するこだわりは世界でも最も高い水準とされます。その中で次のレベルに行くには押し付けではなく、カスタマイズがキーワードになると思っています。(おわり)
 
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(連載1)価値あるものへの消費 岡本 裕明 2025-07-30 11:35
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