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2025-09-19 15:42
(連載1)国連総会「ニューヨーク宣言」でハマス戦争は終わるのか?
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
国連総会(193か国)は2025年9月12日、イスラエルと将来のパレスチナ国家が平和的に共存する「2国家共存」を支持する「ニューヨーク宣言」を採択しました。賛成142か国、反対10か国、棄権12か国の大多数賛成で可決され、欧州諸国や日本などは強く支持する一方、米国やイスラエルは反対票を投じています。この動きは、10月以降激化したガザ地区での軍事衝突に伴う深刻な人道危機を受け、二国家解決の国際的な合意形成を図るために欧州や一部アフリカ諸国の主導で提案されたものです。ではニューヨーク宣言とはどのようなものでしょうか。
まず、イスラエルと将来のパレスチナ国家が「2国家共存」の原則に基づき共存することを明確に支持するということになっています。つまり、パレスチナとイスラエル双方が存在し、また双方が共存するようにするということ、どちらかの国が滅びたりまたは両国の戦争関係を否定し、その双方の平和的な存続を言うということになる。ガザ地区の民間人やインフラへの攻撃が「人道的大惨事と安全保障の危機をもたらした」として厳しく非難することが書かれています。しかし、その原因はイスラエルの攻撃なのかまたはその前に、イスラエルに対してテロを行ったハマスなのかということを明記していない。そのような濁した形の中で、二国家共存の実現に向け、各国が「具体的で期限付きの不可逆的な措置」を講じるよう要請することを進めるということにしています。なお、このニューヨーク宣言は法的拘束力はないものの、9月22日に首脳級会合を開き、実行計画や進捗を協議する仕組みを盛り込んでいます。
国連総会で「ニューヨーク宣言」が圧倒的多数(142対10、棄権12)で採択されたことで、イスラエル・パレスチナ双方に対する国際社会の道義的・法的圧力が一段と強まります。加盟国の大多数が「二国家共存」やガザでの武力行使の即時停止、具体的かつ期限付きの不可逆的措置を求める立場で一致したことで、国連憲章に基づく平和的解決への国際的合意基盤が明確化しました。この宣言は、9月22日に開催予定の首脳級会合を呼びかけ、中長期的な交渉プロセスに具体的な日程感とフォローアップの仕組みを提供しています。英国やカナダなどがパレスチナ国家承認の検討を公言し、EU加盟国やアフリカ連合でも支持を表明するなど、多国間協議のモメンタムが一気に加速する見通しです。
アラブ諸国やイスラム協力機構(OIC)は、ガザ再建やパレスチナ自治政府の統治能力強化に向けた資金提供・能力構築プログラムを宣言に盛り込みました。これにより、UNRWAや世界銀行をはじめとする国連機関や主要援助国が再建支援、人道支援、治安部隊支援を協調して展開する枠組みづくりが前進します。一方、採択に反対したイスラエルと米国は国際的に孤立感を深めるリスクに直面します。主要同盟国との意見調整が難航する可能性が高まり、軍事作戦継続や停戦交渉における外交的コストが増大する懸念があります。(つづく)
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