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2025-09-20 15:55
(連載2)国連総会「ニューヨーク宣言」でハマス戦争は終わるのか?
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
国連総会での圧倒的多数の賛成(142対10、棄権12)により、イスラエルとパレスチナ双方に対する道義的および法的圧力が格段に高まりました。非難決議とは異なり「具体的かつ期限付きの不可逆的措置」を求める文言が組み込まれたため、各国政府は平和的解決に向けた行動を不可避とされつつあります。
「9月22日に首脳級会合を開催する」明確な日程設定が、二国家解決を巡る交渉に具体的な時間軸を与えました。英国やカナダをはじめEU加盟国の中には、この機会をとらえてパレスチナ国家承認を検討すると表明する動きがあり、多国間協議の勢いが一気に加速しています。アラブ諸国やイスラム協力機構(OIC)は、ガザ地区の再建やパレスチナ自治政府の統治能力強化に向けた資金提供・能力構築プログラムを宣言に盛り込みました。これを受けて、UNRWAや世界銀行などが統合的支援枠組みの詳細設計を急ぎ、域内外の主要援助国と協調した人道・復興支援が本格化する見通しです。
採択に反対票を投じたイスラエルと米国は、主要同盟国との意見不一致を際立たせる形となり、国際的な孤立感を深めるリスクに直面しています。特に停戦交渉や人質問題を巡る外交協調は難航が予想され、軍事作戦の是認を理由に同盟国からの批判も高まる可能性があります。非拘束決議ながら「首脳級会合による進捗確認」の仕組みが盛り込まれたことで、加盟国は政治的コミットメントを実務的なフォローアップへと昇華させる圧力を帯びました。今後は、各国が自ら掲げた期限付き措置を検証し合う場として、宣言が事実上の監視・報告メカニズムへと機能する可能性があります。
この宣言は国連総会の非拘束決議にとどまり、停戦や戦闘の即時終結を強制する力は持ちません。採択に反発したイスラエルや米国は、ハマスを利するとして決議への不支持を表明しており、現地では依然として人質救出とハマスの制圧を掲げるイスラエルの軍事作戦が続いています。宣言がもたらすのは主に国際社会の道義的圧力であり、戦闘行為を直ちに止めさせる力には限界があります。今後は首脳会合をはじめとした外交的プロセスや、停戦合意を仲介する国際的な仲介努力、人道支援の拡大といった具体的実務の進展が、戦争を終結に向かわせる鍵となります。いずれにせよ現在国際的に進んでいるパレスチナの国家承認ということに関して、国際社会がどうするのかまた、日本はどのような態度を賭すべきなのかなどが問われる形になるのです。(おわり)
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(連載1)国連総会「ニューヨーク宣言」でハマス戦争は終わるのか?
宇田川 敬介 2025-09-19 15:42
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