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2026-09-27 17:57

(連載2)AIによる「6つのリスク」の陰謀

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 なぜ、強力な権力を持つ支配層がこれほどまでにAIを恐れるのでしょうか。国家安全部が懸念を示す「政権の安定」や「社会秩序の混乱」という言葉の裏には、従来の都市伝説や陰謀論とは一線を画す、冷酷な現実のリアリティが存在します。これまで国家による情報統制は、メディアを押さえ込み、特定のキーワードを検閲することで成立していました。しかし、AIの登場によってその前提は崩壊しました。精巧なディープフェイク動画や、人間の感情を精緻に揺さぶるプロパガンダ文章を秒単位で大量生成できるAIは、監視の網目を容易にすり抜けます。
 
 権力者が真に恐れているのは、外部の敵対国家や民衆の反乱そのものではありません。「誰が作ったのかも分からないAI生成の偽情報によって、世論が一夜にして操作され、国家の根幹である『信用』が破綻すること」なのです。支配するための兵器として磨き上げてきた高度情報社会の技術が、巡り巡って支配者自身の喉元に刃を突きつけている――これほど皮肉な構造があるでしょうか。ここで、私たちはひとつの恐ろしいパラドックス(逆説)にぶち当たります。中国が訴える「AIのリスクを防ぐための強力な統制強化」という姿勢。一見すると、社会の安全や秩序を守るための正当な防衛策に見えます。しかし、陰謀論的な視点を一歩押し進めるならば、これこそが国家による「究極の管理社会」を完成させるための巧妙な口実(大義名分)なのではないか、という疑念が浮かび上がります。

 「AIのリスクから国民を守るため」という名目のもと、あらゆるAIシステムに政府のバックドアが仕掛けられ、市民の思考やアルゴリズムの挙動が24時間体制で監視・統制される。もしそうだとすれば、国家安全部が警戒している「政権を揺るがすAIの脅威」そのものが、監視体制をさらに強固にするための自作自演、あるいは都合の良い演出だという見方もできてしまいます。「AIという脅威から逃れるために、私たちはより深い監視の檻へと自ら進んで入っていく」――これこそが、現代において最も洗練された「陰謀」のシナリオなのかもしれません。
 
 かつて陰謀論は、国家や秘密結社という「人間」が仕掛けるものでした。しかし今、私たちは「国家すらも恐れるAI」と「AIを恐れるフリをして統制を強める国家」という、真実と虚構が入り乱れる迷宮の中に立っています。中国の情報機関トップが発した警告は、単なる一国の安全保障のニュースにとどまりません。それは、私たちが信頼してきた「国家」「情報」「そして真実そのもの」の崩壊を告げる、静かなカウントダウンの音なのかもしれません。画面の向こうで語られる「国家の危機」。それは本物の悲鳴なのか、それとも次なる支配への招待状なのか――答えは、アルゴリズムの海の中に消えていきます。(おわり)
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(連載1)AIによる「6つのリスク」の陰謀 宇田川 敬介 2026-09-26 17:49
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