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2008-04-28 10:21
(連載)オストリッチ症候群の日本(2)
古屋力
会社員
世界から発信されてくる信号を正確に受信し、かつその意味を適確に認識し、それに対して、迅速果敢に行動できる素質と仕組みが、日本人にはないのであろうか。その時と同じことが、今また起ころうとしている。そして依然として「オストリッチ症候群」の呪縛から解放されていない。今の「地球環境問題」、「気候変動問題」に対する日本の対応が、それである。
いまや世界的な規模で排出権市場の統合へのモメンタムが加速しつつある。EU-ETS(EU域内排出量取引制度)をベースに、大西洋を越えて米国で近未来に立ち上がるUS-ETSとのグローバル・リンケージを基軸とした、新しいグローバル・カーボン市場創設への槌音が聴こえてきている。更には、カーボンを国際通貨に進化させてゆく可能性まで見え隠れしてきている。そこにおいて、なぜ我が国は、指導的で主体的なアクターとして振る舞わないのであろうか。なぜ日本は、グローバル・リンケージを協議するICAP(国際カーボン・アクション・パートナーシップ)においてすら、主体的かつ建設的な参画者ではなく、傍観者的なまさにオブザーバーであり続けているのか。それはなぜなのか。そこに無作為の罪はないのか。いずれ全ては歴史が証明するであろうが、気がついたときでは遅すぎる。
世界一の排出権需要国の1つであり、洞爺湖サミット議長国で世界に率先して地球環境を熱く語ろうとしている日本が、まさにかような消極的で膠着的な状態にある。それでは世界は、日本を軽蔑はしても、尊敬はしないであろう。それが意味することは「オストリッチ症候群」の症状のそれである。直前に慌てふためいて、体裁だけ整え、会議が終ったら、すっかり気合いや意欲が抜けてしまう、という有様であってはならない。
洞爺湖サミットを目前に、昼夜懸命に準備をしている現場の関係当事者に罪はないし、彼らの立案を無策と揶揄するつもりもないが、日本の指導者は、さらに大局観に立って、いま欧米でどのような青写真が描かれようとしているのか、という情報に対する感度を高めるとともに、最悪の事態を想定して周到で具体的な戦略を発想することに努力してほしい。(おわり)
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投稿履歴
(連載)オストリッチ症候群の日本(1)
古屋力 2008-04-27 20:19
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(連載)オストリッチ症候群の日本(2)
古屋力 2008-04-28 10:21
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