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2008-05-20 10:30

(連載)人権だけではないチベット問題の本質(2)

國尾守  団体役員
 中国は、そもそもの発端から一貫して、チベットは自国の領土の一部であり、チベットに関する外国からの批判は内政干渉だという主張をしてきている。「ウソも百遍言えばホントになる」というが、まさにチベット問題に関する中国の主張がそれではないのか。チベット問題の根源は、朝鮮戦争の最中に起きた1950年11月の中国によるチベット武力侵攻にある、と私は記憶している。当時私はもう中学生で、結構新聞なども読んでいたから、多少の不正確さはあっても、大筋の記憶に間違いはない。

 チベットは当時国連への加盟国ではなかっただろうが、独自の言語と文化を持つ一つの独立国として存在していた。最近、『中央公論』5月号にペマ・ギャルポ氏が載せた論文や、櫻井よしこ女史が理事長を務める国家基本問題研究所の会報などを見ても、私の記憶がほぼ正しいことを確認できた。ネットの記事によると、チベットは当時国連に提訴したとのことである。もっとも、インターネットでは、ウィキペディアをはじめいろいろな記載があるが、これらはどうやら中国サイドの干渉を受けて、書き直しを迫られているらしい。なんとか時間をつくって、昔の新聞の縮刷版をチェックせねばと考えている。

 独立国チベットに圧倒的な武力をもって侵攻し、支配下においた中国は、その後鉄道を敷いたり、漢人を大量に送り込んで定住させたり、また漢人とチベット人との結婚を奨励(強制?)したりして、同化政策を取ってきているらしい。これは植民地政策以外の何物でもないのではないか。丁度折悪しく朝鮮動乱の真っ只中でもあったためか、またチベットが西側先進国にとって中東などとちがい戦略的な意味が大きくないと考えられたためか、結局国連も強硬な手段を取らず、中国の居座りを黙認するような結果になってしまった。見方によっては、中国が朝鮮動乱のドサクサに紛れてチベットに攻め込んだともいえよう。(つづく)
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