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2008-09-16 09:01
(連載)北京五輪後の中国政治体制の行方(2)
関山健
東京財団研究員
物価上昇は1989年の天安門事件の遠因でもあった。現在の中国も足元で物価上昇が進んでおり、庶民の生活を圧迫しつつあることから、これが現体制への不満につながるリスクは否定できない。今のところ物価上昇を上回る水準で都市住民も農村住民も所得が増えているため、消費は堅調に伸びており、目立った影響は出ていない。また、消費者物価指数(CPI)の上昇は昨年5月頃から始まったため、それから1年経ち、対前年同月比で表される上昇率は、5月が7.7%、6月が7.1%、7月が6.3%と徐々に落ち着いてきている。
しかし、生産者価格指数が上昇傾向にあり、7月には対前年度比10%増を記録していることには注意を要する。今後この生産者物価の上昇が小売価格に転嫁され、消費者物価を押し上げることが危惧される。また、中国政府は6月20日からガソリンなどの基準価格を引き上げており、これもCPI上昇率を高める要因になろう。さらに、5月に大地震に見舞われた四川省は、高騰を続ける豚肉の大生産地であり、5月下旬から6月にかけて南部を中心として発生した水害は、夏以降の農産物の生産に暗い影を落とした。こうした自然災害が、今後の物価に影響を及ぼす可能性も小さくないのではないか。
特に、食料品(CPI中34%の構成割合)は、5月の前年同月比で19.9%の上昇を見せており、豚肉、大豆、食用油などは、40%を超える価格上昇であった。食料品の値上がりはm庶民の生活を直撃する。所得の伸びも徐々に鈍化しつつあり、徐々に「昨日より今日、今日より明日の生活がよくなる状態」が成り立たない人々が増えてきていると見られる。単なる格差の拡大ではなく、こうした生活上の不満が、昨今中国各地で見られる住民暴動の遠因だと考えられる。(つづく)
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