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2008-09-17 12:09
(連載)北京五輪後の中国政治体制の行方(3)
関山健
東京財団研究員
もう一つ、住宅価格の下落によって、中国が日本の「失われた10年」と同じ道を通ることがないよう祈っている。中国の経済成長は住宅関連投資が牽引していることから、住宅販売の不振により住宅関連投資が伸び悩むこととなれば、中国経済全体の足を引っ張りかねない。
また、今年3月末の銀行貸付残高27兆5000億元のうち、不動産開発業者向け貸付が1兆8000億元、個人住宅ローンが3兆1000億元であり、これらを足すと貸付残高の17.8%に上るが、もし、これらが住宅販売価格の下落によって不良債権化すれば、銀行の貸出余力が減少し、投資の減少や企業の倒産を招く、という負のシナリオすら危惧される。不動産価格の下落によって個人や企業が破産する結果、銀行には巨額の不良債権が発生し、それが更なる不動産価格の下落や企業の倒産を招く、という日本の「失われた10年」のシナリオだ。
中国政府は、物価上昇の恐ろしさを十分理解しており、また、日本の失敗の経験も詳しく研究している。中国政府は「物価抑制のためのブレーキ」と「景気下支えのためのアクセル」を同時に踏むという難しい経済運営を迫られているが、上手く成し遂げることを期待している。経済が不調となり、「昨日より今日、今日より明日の生活がよくなる状態」が成り立たない人々が増えてくると、不正によって私腹を肥やす地方幹部などの特権階級への不満が募る。また、地方幹部の不正を暴こうとする住民の鎮圧にあたる公安警察に住民の直接的な怒りが向けられることにもなりやすい。昨今、中国各地で公安警察が襲われる事件が多発している背景には、こうした要因を指摘できる。
こうした事態を放置しておくことは、まさに現体制の有効性と正当性を大きく傷つける結果となりかねないことから、中国指導部は、地方幹部の腐敗防止・摘発に力を入れているのである。(おわり)
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(連載)北京五輪後の中国政治体制の行方(3)
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