我々日本人は我々の身体の中に宿っているDNAにもっと誇りをいだいてもいいかもしれない。秋の夜長、渡辺京二の『逝きし世の面影』を読みつつそう思った。この本に、とあるオランダ人の日本への感想のくだりが書いてあった。正直言って、驚いた。当時、西洋人がそれほどまでに日本の文化に敬意を払い、しかもその本質を洞察し、それを西洋文明で汚すことを謙虚に躊躇していたのかといたく感動した。長崎で海軍伝習所教育隊長をしていたオランダ人のカッテンディーケ(Huijssen van Kattendijke)が、1859年に祖国に帰るときに残していった言葉である。彼は、こう言っている。「自分がこの国にもたらそうとしている文明が、果たして一層多くの幸福をもたらすか、自信がない」と。