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2009-04-02 08:27

(連載)中国の国際戦略と日本(3)

関山 健  東京財団研究員
 中国が今後どのような国際レジームを目指すのかも多くの人々の関心事である。この点、王緝思院長は「既存の国際レジームは、中国の国家利益にとって基本的には有利に働いている」との認識を示しつつも、しかし「一部に不利な部分があることも事実であり、そこは中国として変更を求めていかねばなるまい」という。王緝思院長の言葉からは、既存の国際レジームを盲目的に擁護していくのではなく、あくまで中国に有利な形へ変えていこうという中国の意図が読み取れる。

 ただし、王緝思院長は「世界の覇権を目指すことは、決して中国発展の道ではない」とも言う。中国は、現在アメリカが覇権を握っている現状に挑戦する意図もなければ、自らが覇権を目指すこともないというのだ。ここまで聞いていると、中国の国際戦略とは、安定と平和を志向して全方位外交を展開することのようである。しかし、本当に中国は、そのような「平和台頭」(中国語:和平崛起)の道を進むのであろうか。

 この点、王緝思院長は「中国の台頭は他国にとっての脅威であるし、国家統一を阻む台湾独立などの動きには断固とした態度を採ることになるのであって、完全な平和台頭はありえない。」と率直に認める。

 さらに、話が毎年2桁の伸びを続ける軍事費に及ぶと、「中国が軍事を考える際には、例えばモンゴルのような国との比較で考えるのではなく、アメリカとの比較で考える。それも、アメリカ単体ではなく、その同盟国の力量も併せて比較するのである。この点、中国の軍事力や軍事費はアメリカに遠く及ばない。今後空母を持つことにもなるだろう。いずれにせよ、中国はあくまで自国にとっての必要性に応じて軍事を考えており、決して海外の意見によって軍事費を減らすことはないだろう」という。国際政治学でいう現実主義的な見解を淡々と、しかし力を込めて語った。(つづく)
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