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2009-06-17 17:10

(連載)地球温暖化対策中期目標について(1)

木下 博生  全国中小企業情報促進センター参与
 政府は、先週、地球温暖化対策の中期目標を定め、2020年までに炭酸ガスの排出量を2005年の排出量より15パーセント削減することを決めた。これに対しては、国内でも賛否両論があり、環境保護論者からは、もう少し大きくカットすべきだとの意見が出されている。また国際会議の場でも、中国をはじめとする発展途上国は、日本などの先進工業国こそ、さらなる大幅な排出量削減を行うべきだと主張しているという。

 この問題に関しては、昨年12月の本欄への投稿で、私は地球上で排出される炭酸ガスの量に占める化石燃料からの炭酸ガスの量が3%強に過ぎないことを指摘し、これだけが地球温暖化の元凶だとする議論の危険性に触れた。最近の本件に関するマスコミの報道は、化石燃料の燃焼にともなう炭酸ガスの排出量をどうするかだけに焦点を当てており、われわれ人類の呼吸にともなう炭酸ガスのことなど忘れてしまっている。

 IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告では、「人間の活動に起因する」温室効果ガスの排出として、化石燃料から出る炭酸ガス、森林伐採により吸収されなかった炭酸ガス、メタン、酸化窒素、フロンなどを温室効果ガスと規定している。この中では取り上げていないが、毎年増加している人類が呼吸することにより排出している炭酸ガスは「人間の活動に起因」するものではない、と考えているのであろうか。

 専門家でない者が疑問を呈するだけでは、納得のいく答えは得られないであろうから、この問題はここで措くとして、いまや化石燃料からの炭酸ガスを減らすための方策が賑やかな話題になっている。太陽光や風力発電設備を増強すべきであるとか、電気自動車を開発せよ、あるいはバイオ燃料を増産したらよい、という類の議論である。これらのいわゆるクリーン・エネルギーは、地球温暖化対策として意味があることは間違いない。しかし、これだけで十分だと言えるかどうかは、総合的かつ科学的な検証を行った上で判断すべきだと考える。(つづく)
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