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2025-10-28 10:23

(連載2)外国人問題-ユダヤ人迫害のパラドックス

倉西 雅子 政治学者
 ユダヤ人の多くが、‘敵’でもなく‘味方’でもない曖昧な存在として生きてきたのは、ユダヤ教やユダヤ人としての伝統的な生活習慣への固執もあって、居住国の一般国民からユダヤ人が猜疑の目を向けられてきた要因でもあります。とりわけ戦時ともなりますと、部外者の立場から戦争の激化を煽り、戦争当事国の双方に武器を売ったり、戦時国債の引き受けで大儲けを企むかもしれないからです(マネー・パワーによって戦争に誘導したり、戦争の勝敗さえ操作しかねない・・・)。
 
 ユダヤ人の歩んできた特異な歴史からしますと、同民族は、他に類例を見ない唯一無二の‘民族’であると言っても過言ではないかも知れません。そしてこの顕著な特徴は、ユダヤ人をもって今日の移民一般と同一視することはできないことを意味します。そもそも今日の移民には出身国が存在しますので、外国の対人主権が及んでいます(内政干渉のみならず軍事介入の口実リスクさえある・・・)。むしろ、ユダヤ人に注目するならば、移民一般と同一視するよりも、背後から移民政策を推進しているグローバリストの行動や思考様式の理解に役立つことでしょう。多文化共生主義とは、まさしく固有の文化を保持しながら異郷で生きてきたユダヤ人の要求に他なりませんし、マイノリティー保護も同民族の悲願であったはずなのですから。そして、マネー・パワーをもって各国の政府内部に自らの影響力を浸透させ、国際社会全体を巧みに操作する術も・・・。
 
 そして、このグローバリスト理解は、国民国家一般に危機が迫っていることをも示唆しています。何故ならば、近代国家は民族自決型の国家であるがゆえに、グローバリストの要望を受けて、政府が外国人の永住や帰化による受入や移民文化保護をもって国民に臨んだ場合、一般国民が、自らを保護する仕組みや枠組みを失う側となるからです。かつてのユダヤ人と一般国の立場が逆転し、後者の方が事実上の保護なき‘流浪の民’となってしまうのです。
 
‘ユダヤ人迫害’の事例をもって外国人保護に務めた結果、一般国民が祖国なきユダヤ人化するのでは、これは、パラドックスとしか言いようがありません。日本国の法務省は、ヘイトスピーチ規制の強化に意欲を見せていますが、この動きもこの危険性を示す兆候なのではないかと危惧するのです。(おわり)
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(連載1)外国人問題-ユダヤ人迫害のパラドックス 倉西 雅子 2025-10-27 10:19
(連載2)外国人問題-ユダヤ人迫害のパラドックス 倉西 雅子 2025-10-28 10:23
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