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2008-01-31 19:38
(連載)現状維持選択した台湾有権者(1)
岡田充
共同通信編集委員
台湾総統選の前哨戦とされた1月12日の立法委員選挙で、野党の国民党が圧勝した。与党の民主進歩党(民進党)は歴史的惨敗を喫し、陳水扁総統は党主席を引責辞任した。政権争奪をめぐる天王山は3月22日の総統選挙になるが、国民党圧勝は台湾内政と台湾海峡をめぐる国際情勢に大きな変動要因を与えた。結論的に言えば、国民党の勝因は、(1)小選挙区制移行に伴う「地滑り現象」に加え、国民党の「台湾化」と現状維持路線が奏功した、(2)国民党路線と中国の「現状維持路線」が共振し「国共合作」が成功した、(3)総統選で民進党が勝利しても、総統権限がぜい弱なため「台湾独立」につながる動きは展開できない、(4)米中とも選挙結果を好感しており、今後4年間は両岸関係は緩和し、「三通」を含む経済・貿易関係も前進する、といったことなどである。選挙結果を振り返りながら、国共両党が「統一」から「現状維持」へと舵を切った背景を分析するとともに、総統選の展望や福田首相の住民投票「不支持」発言の効果などに言及したい。現状維持へ向けた中国の政策調整について、日本の世論の理解は十分ではないと感じるからである。
まず選挙結果が台湾内政の基本構造に与えた変化を挙げよう。変化を列挙すると、(1)国民党の議席は3分の2を上回り、総統罷免権限を掌握した。(2)国民党系の5人を足した野党陣営は86議席となり、憲法修正の発議案採択も可能な4分の3に達した。(3)民進党が総統選で逆転しても、憲法修正など「独立」に向けた政策は否決される。(4)逆に国民党が政権を奪回すれば、2000年以前の国民党時代と同様、総統、行政、立法の三権が国民党に集中する。これらの変化をみれば、民進党が総統選で勝っても「現状の回復」を意味しないことが明らかになろう。国民党は、総統権限を大幅に制限し、「神棚に祭り上げる」ことができるからである。国民党の馬英九候補は、この変化を意識してか、17日「民進党の謝長廷候補が当選しても、総統権限は十分発揮できない」と語った。
次は「不変要因」である。民進党は得票率からみれば「大敗」したわけではない。同党は選挙前「目標は50議席」(陳水扁)とし、過半数(57議席)獲得は当初から放棄していた。「現有議席占有率並みの45議席をとれば善戦」であり、陣営内には「32議席程度」と予測する向きもあった。与党にとって焦点は「勝敗」ではなく、「負け方」にあった。敗北を予測した理由は、基礎票の差だ。民進党政権下の過去2回の立法院選の与党と野党の得票率は、2001年が32.6%対53.5%。04年が43.5%対46.9%であった。今回、政党別比例代表選挙での得票率をみると、民進36.9%に対し国民は51.2%であった。李登輝の台湾団結連盟の3.5%を与党票に加算すれば40%を超え、得票率は3ポイント余り減ったにすぎない。「不変要因」は、与野党の基礎票に大きな変化がなかったということである。(つづく)
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