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2008-02-01 11:10
(連載)現状維持選択した台湾有権者(2)
岡田充
共同通信編集委員
勝敗の背景を分析する。今回の立法院選挙から選挙制度が変わった。定数半減とともに、従来の大・中選挙区制から、日本同様、小選挙区・政党別比例代表並立制へと移行した。与野党の得票率を従来の大・中選挙区制に当てはめて試算すれば、国民党議席は50%をわずかに上回る58.6%であり、与党は44.5%である。与党惨敗の主要因は、小選挙区制の導入にあった。小選挙区制の恐ろしい「地滑り現象」である。民進党候補は約10選挙区で小差で敗北しており、次回選挙では逆転の可能性がある。
その他の敗因とミスを挙げれば、(1)総統一族の横領事件などの腐敗、(2)経済と対中関係改善での無策、(3)国連加盟の住民投票をめぐる対米関係の悪化などである。さらに選挙戦術面では、(1)総統スキャンダルをめぐる党内不協和音が立法委員選や総統予備選まで尾を引いたこと、(2)野党陣営は選挙協力に成功したが、民進党は台湾団結連盟との協力に失敗したことなどが挙げられる。これらをまとめると、与党は「台湾人意識をあおり、中国への挑発を選挙に利用した」が、これが中間票の支持離れ(棄権)を招いた。2期8年の政権の座にあぐらをかいた「おごり」と言えよう。
一方、国民党圧勝の最大の要因は、国民党の台湾化にある。台湾の現状と将来は、(1)中台の経済相互依存関係の深まりを背景に、統一を求める中国、(2)強まる台湾人意識をバネに統一に反対し、自立を維持しようとする台湾、(3)統一も独立も支持せず、軍事力をバックに現状維持を求める米国、という中台米の三角形の協力とけん制のバランスによって決定される。この中で台湾では、台湾人アイデンティティが強まりつつあり、「自分は台湾人」と認識する住民が15年前の17%から44%に増えた一方、「自分は中国人」と認識する住民は22%から6%まで激減した。2000年の政権交代劇は、国民党分裂に乗じ民進党が「漁夫の利」を得たものであり、得票率はわずか39%だった。だが、2004年選挙では、「銃撃事件」という突発要因もあって、得票率は初めて過半数を超えた。背景に「台湾人意識」の強まりがあることは否定できない。
総統選に二連敗していた国民党は、この意識変化に対応して中間票を取り込まねば選挙に勝てなかった。それが国民党の台湾化を促した。「一つの中国」と「終局統一」を維持しつつも、当面は現状維持を主張し、(1)統一・独立を選択するのは台湾住民という「自決論」の提起、(2)党規約に「台湾優先」を挿入、(3)住民投票への立場を「反対」から「賛成」に転換するなど、統一色を薄め「台湾政党」への脱皮を図った。(つづく)
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